恋の微熱に溺れて…
「京香さん、あっちで甘酒を配ってるみたいなので飲みませんか?」

慧くんが嫌な流れを変えてくれた。私はそんな慧くんの優しさに乗っかることにした。

「いいよ。甘酒飲みたい」

一緒に甘酒が配られている場所へと向かった。並んで甘酒を頂いた。
甘酒は美味しくて。気持ちがほっこりした。

「屋台で色々売ってるみたいなので、買いませんか?」

周りを見渡してみると、確かに屋台がいくつかある。
どの屋台も美味しそうで。どれにしようか迷ってしまう。

「いいよ。でもどれも美味しそうで迷っちゃう…」

「京香さん、せっかくなので全部買っちゃいましょう」

食いしん坊の私を見て、慧くんはそう言ってくれた。
今思えばきっとおみくじの結果が悪かった私に対して、励ますためにそうしてくれたんだと思う。
そのことに気づいた瞬間、慧くんはいつでも完璧で優しい彼氏だなと思った。
そんな彼氏には一生敵わない。だって彼は私を喜ばせる天才だから。

「そうしよっか。全部食べられるの楽しみ」

私が食べたい屋台に全部並び、食べたいものをとことん食べた。
美味しいものを食べたら、先程の嫌なことが一気に吹き飛び、気分が良くなった。

「慧くん、ありがとう。元気出たよ」

私がそう言うと、慧くんは白を切った。

「俺も食べたかっただけなので。外で食べるのも美味しいですから」

美味しいものは誰と食べるかの方が大事で。場所なんて関係ない。
たまにはこんなふうに外で食べるのも悪くないと思った。
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