ねぇ、好きになってよ、僕だけのお姫様。
急に消えてしまいそうなほど儚くて、
その腕の力だけがかろうじて、生きていることを証明している。
それなのにこれ以上抵抗しても意味がない、
と思わせることができる彼は何者なのだろうか。
なすすべがない私は、とりあえず男の人の腕の中でじっとしていることにした。
「あれ、大人しくなったの?
ジタバタしてるのかわいかったのに。」
何かぼそっとつぶやかれた気がしたけど、
よく聞こえなかったな……
ま、いっか。
「ここに座って待っててね」
そう言われて下ろされたのは、ふかふかのクッションが置いてある椅子。
あたりを見渡すと、部屋は白が基調になっていて、殺風景だった。
椅子の前には木製の丸いテーブルがあり、その奥には同じような椅子がもう一つあるだけ。
窓があるのを見つけて鍵を開けてみたが、私の淡い期待は粉々に砕かれた。
「…高っ!」
私が閉じ込められているであろうこの部屋は
下の道路を走っている車が点に見えるほど、高いところだったのだ。
急に怖くなった私は、椅子にちょこんと座り、
ふわふわしているクッションを思わずぎゅっと抱きしめる。
「クッション気に入ってくれたの?」