ねぇ、好きになってよ、僕だけのお姫様。


急に消えてしまいそうなほど儚くて、
その腕の力だけがかろうじて、生きていることを証明している。


それなのにこれ以上抵抗しても意味がない、
と思わせることができる彼は何者なのだろうか。


なすすべがない私は、とりあえず男の人の腕の中でじっとしていることにした。


「あれ、大人しくなったの?
 ジタバタしてるのかわいかったのに。」


何かぼそっとつぶやかれた気がしたけど、
よく聞こえなかったな……


ま、いっか。


「ここに座って待っててね」


そう言われて下ろされたのは、ふかふかのクッションが置いてある椅子。


あたりを見渡すと、部屋は白が基調になっていて、殺風景だった。


椅子の前には木製の丸いテーブルがあり、その奥には同じような椅子がもう一つあるだけ。


窓があるのを見つけて鍵を開けてみたが、私の淡い期待は粉々に砕かれた。


「…高っ!」


私が閉じ込められているであろうこの部屋は
下の道路を走っている車が点に見えるほど、高いところだったのだ。


急に怖くなった私は、椅子にちょこんと座り、
ふわふわしているクッションを思わずぎゅっと抱きしめる。


「クッション気に入ってくれたの?」
< 10 / 15 >

この作品をシェア

pagetop