逃げ道を探すには遅すぎた
追い出された時はショックだったけど、今ではこれでよかったんだって思える。やっと自由になれた。やっと自分の向き合いたいと思っていたものと向き合えるようになったからーーー。

(今が幸せなら、いいんじゃないかな……)

シャノンとウィリアムの顔が浮かぶ。二人の笑顔を考えるだけで胸の中に幸せが溢れていく。その時だった。

背中に鋭い痛みが走る。何が起こったのかわからなかった。体がいつの間にか地面に倒れていて、どんどん指先から体が冷たくなっていく。

「……な、に……?」

どこからか聞こえた悲鳴、そして私の前に立ったフードを被った男。この人に見覚えがある。私の弟だ!

「……なん、で……」

「お前が!!お前が受験に失敗したから、俺はさらに厳しくされるようになったんだ!!お前が全部悪いんだ!!」

そう吐き捨て、弟はどこかへ走って行ってしまった。……もう体に力が入らない。

『雫!!』

シャノンとウィリアムが駆け寄ってきた。二人とも泣いている。……最悪だ。こんな姿を二人に見せてしまった。
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