早河シリーズ第二幕【金平糖】
 早河探偵事務所に着くと、事務所にはなぎさも矢野もいない。早河と有紗の二人きり。

『上について来い』
「上?」
『上は俺の自宅になってんだよ』

 事務所の奥には給湯室とトイレの他に階段がある。狭い廊下を通って給湯室とトイレを通り過ぎ、早河に続いて有紗は階段を上がった。

三階の早河の自宅は広いリビングとリビング横に扉がひとつあった。早河がその扉を開けた。

『入れよ』
「……お邪魔します」

早河に促されて入ったそこは寝室だった。ひんやりした空気を肌に感じる。

 早河は煙草に火をつけてベッドに腰かけた。有紗は部屋の入り口に立ち尽くして一服する早河に困惑の眼差しを向ける。

『さっきの、俺が優しい男じゃないって言った意味をお前は勘違いしてる』
「勘違い?」
『こっち来い』

 彼は自分の隣を指差す。有紗は戸惑いながらもベッドに腰かける早河の隣に座った。
早河は何度か煙草の煙を吐き、まだ長い煙草を灰皿に押し付けた。

早河の腕が有紗の肩に回って二人の顔が近付く。目を泳がせる有紗の頬に彼は触れた。

『優しくないって言うのはな、こういうことだ』

 困惑で瞳を揺らす有紗の唇に早河の唇が接触する。そうしてあっという間に彼女の中に侵入してきた彼の舌が、口内で好き勝手に暴れていた。

乱暴で強引で、息をするのも許されない優しくないキス。
有紗は目を見開き、早河の乱暴な行為にされるがままでいるしかなかった。無意識に涙が溢れてくる。

 有紗はこうなることを望み、こうなることを期待していた。それなのに戸惑い、動揺している。期待と動揺、嬉しさと戸惑い。

早河の吸う煙草の味が口の中に広がる。
それは甘いのに苦い? 苦いのに甘い?
どちらだろう?

 キスをしながら早河は軽々と有紗をベッドに押し倒した。

「早河さん……?」
『大人の女として扱って欲しいんだろ?』

無表情にこちらを見下ろす早河を初めて怖いと感じた。今の早河は有紗の知る早河ではない。

『俺はお前をナンパしてホテルに連れ込もうとした男と同じだ。手軽でちょうどいい女がいるなら遠慮はしない』
「ちょうどいい……?」
『そうだ。男なんてみんな同じだぞ。性欲の発散の道具のために女を使う。そこに愛情がなくても男は女を抱けるんだよ』

 有紗に馬乗りになった早河の手が彼女の下半身に伸びる。有紗の身体は恐怖で固まって身動きできない。
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