早河シリーズ第二幕【金平糖】
 結局、タカヒロは自分とは遠い世界の人間だった。優しく近付いてきたのもMARIAに引き入れるための偽りの優しさ。

彼が死んでも悲しい、寂しいの感情はない。タカヒロが殺された理由もきっと殺されるだけの悪いことを彼がしていたからだと、高校生の有紗にはそれ以上の考えは浮かばない。

 慕っていた先輩の木内愛が死んだ時はあんなに悲しくてたまらなかったのに。でも愛の死を知った後も有紗は普通の日常を営んでいる。
愛の死もタカヒロの死も、自分の生活に何の影響もなかった。

 ニュースで知らない土地の知らない人が事件や事故で亡くなりました、と報道されるのを朝食を食べながら無関心に見て、無責任に「可哀想だね」と言うあの感覚。
同時に、自分は今日も生きていて良かったと思う感覚。

でも、もしかしたら今日、自分が事件や事故に巻き込まれて死ぬかもしれないのに、誰もが自分だけは“絶対に死なない”と根拠のない自信を持っている。

だから人の死も他人事。有紗もやっぱり人の死は他人事にしか思えなかった。

(世の中いろんな大人がいるなぁ)

 家出をしてからのこの1週間でそれでも自分は少しだけ成長したかもしれない。

早河、なぎさ、矢野。信じてもいいと思える大人に出会えたこと、タカヒロへの想いが恋ではなくただの甘えだと気付いたこと、自分は大人ではなくひとりでは何もできない非力な子供なんだってこと。

 有紗の周囲で起きた連続殺人事件。殺されたのは同じ学校の先輩、同級生、親しくしていたクラブDJ。

(早河さんは事件のことは何も話してくれないけど、殺人事件にはMARIAが関係してるんだよね。でも何で? 愛先輩はMARIAには入ってないのに……)

四谷三丁目駅に通じる入り口が見えた。急ぎ足で歩く有紗の背後に、大きな陰が迫っていた。
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