眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
 ローラを抱きしめながらヴェルデはふーっと息を深く吐いた。そして、ローラからゆっくりと体を離してローラの顔を覗き込む。

「もう二度と、ローラにあんな選択はさせない。どんなことがあってもローラを守って、ローラの命を狙いローラに近づく奴らはローラに出会う前に叩き潰す」

 そう言うヴェルデの顔は決意に満ちていて、ゾッとするほどの恐ろしさを秘めている。そんなヴェルデの顔を見て一瞬ローラがビクッと体をこわばらせると、ヴェルデはすぐに悲しげな顔になった。

「ごめんローラ。こんな俺、怖いだろう。でも、ローラのことを思うと気持ちが抑えられないんだ。俺からローラを奪おうとする奴は絶対に許せない。ローラの明るい未来を踏みにじろうとする奴は、俺が絶対に許さない」

 そう言って、またヴェルデはローラを抱きしめた。ローラの予想を超えて、いつもヴェルデは大きな愛を惜しみなくぶつけてくる。本来であれば怖がってもおかしくないのかもしれない。でも、ローラはヴェルデからのそんな愛情表現を、心の底から怖いと思うことはなかった。

「……怖くなんかないです。だって、ヴェルデ様は私のことを思って怒ってくださってるのでしょう?ヴェルデ様は何も悪くないのに、御自分のことを責めてらっしゃる。むしろそんな風に思わせてしまった私も悪いんです」

 そう言って、ローラはヴェルデの背中を優しく擦ると、しばらくしてからヴェルデは大きくため息をつく。

「当分、ローラと二人だけでゆっくりしたいな。イヴの兄たちのせいで、出店市もゆっくり回れなかったし、ずっと緊張したままで過ごしていただろう?二人でただただゆっくりしたい」
「そうですね。……でも来週は確か王家も絡む社交パーティーがあったのではありませんか?ガレス殿下に絶対に来るようにと言われていたはずです」

 ローラの言葉に、ヴェルデはローラから体を離しゲンナリとした顔をして、また大きくため息をついた。

「そうだった。ああ、めんどくさいな。でもローラも一緒にと言われていたし……そうだ、結婚してからは初めての社交の場だよね」
「そうですね、前回は婚約者の時でしたし」

 ヴェルデはゲンナリとした顔から一転、目を輝かせる。

「ふふ、そうか、ローラが俺の奥さんとして一緒に出れるのはそれはそれで楽しみかもしれない」

 ヴェルデは嬉しそうに笑ってローラを見つめると、ローラもそんなヴェルデを見てつい嬉しくなって一緒に微笑んだ。
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