眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
「隣国ティアールの出身と伺いましたが、奥様についてひとつお聞きしてもよろしいかな、筆頭魔術師殿」
会場にいた中年の貴族が一人、突然声を上げる。ヴェルデは一瞬警戒する表情を見せたが、すぐにいつも通りの表情になり、小さく頷いた。
「貴殿の奥様について、妙な噂を耳にしたのですよ。奥様は隣国で百年もの間眠り続けていた当時の姫君で、この国に来てから、奥様を狙う人間がこの国に入り込んでいる、と」
貴族の言葉に会場内がざわめく。だからあんなにも所作が美しいのか、という声まで聞こえてきた。
「しかも、隣国だけではなく他の国からも奥様を狙う人間がいたとか。そんな人間が国内にいたとなれば問題ではありませんかな?それに、今後もそのようなことがあれば物騒なこと、我々としても国そのものが心配でなりません」
「それに、奥様が隣国のスパイという可能性もありますな。この国に入り込む口実として奥様を狙っていることにする、とか」
別な貴族からも声が上がる。あいつらが今回レイナー騎士団長に依頼した貴族か、とヴェルデは冷ややかな視線を送りながら、憤る気持ちをこらえるように降ろしたままの拳を握りしめた。
「ローラ嬢がスパイでないことは俺が直々に確認している。だが、それでもローラ嬢がこの国にいることが不満なのであれば……ローラ嬢。何か言いたいことはあるか?」
ガレスにそう促され、ローラは会場を見渡して一瞬怯んだ。ローラを疑心暗鬼な目で見る人、不安げな表情の人、ヒソヒソと話をしている人。さまざまな人がローラに視線を集中させている。
(怖い……でも、私はここでヴェルデ様と一緒に生きていくとあの時決めたのだから。こんなことで怯んでいる場合ではないわ。私は百年前から何度も、色んなことを乗り越えてきたのだから)
ぎゅっとドレスを掴み、ローラは目を瞑って深呼吸する。そして目を開いて横にいるヴェルデを見つめる。ヴェルデはローラの瞳をしっかりと見つめ、頷いた。それを見てローラも頷き、正面を見て口を開いた。
「私は確かに、百年前隣国であるティアール国で魔法によって眠り続け、百年後のこの時代にヴェルデ様に起こしていただいた身です」
会場にいた中年の貴族が一人、突然声を上げる。ヴェルデは一瞬警戒する表情を見せたが、すぐにいつも通りの表情になり、小さく頷いた。
「貴殿の奥様について、妙な噂を耳にしたのですよ。奥様は隣国で百年もの間眠り続けていた当時の姫君で、この国に来てから、奥様を狙う人間がこの国に入り込んでいる、と」
貴族の言葉に会場内がざわめく。だからあんなにも所作が美しいのか、という声まで聞こえてきた。
「しかも、隣国だけではなく他の国からも奥様を狙う人間がいたとか。そんな人間が国内にいたとなれば問題ではありませんかな?それに、今後もそのようなことがあれば物騒なこと、我々としても国そのものが心配でなりません」
「それに、奥様が隣国のスパイという可能性もありますな。この国に入り込む口実として奥様を狙っていることにする、とか」
別な貴族からも声が上がる。あいつらが今回レイナー騎士団長に依頼した貴族か、とヴェルデは冷ややかな視線を送りながら、憤る気持ちをこらえるように降ろしたままの拳を握りしめた。
「ローラ嬢がスパイでないことは俺が直々に確認している。だが、それでもローラ嬢がこの国にいることが不満なのであれば……ローラ嬢。何か言いたいことはあるか?」
ガレスにそう促され、ローラは会場を見渡して一瞬怯んだ。ローラを疑心暗鬼な目で見る人、不安げな表情の人、ヒソヒソと話をしている人。さまざまな人がローラに視線を集中させている。
(怖い……でも、私はここでヴェルデ様と一緒に生きていくとあの時決めたのだから。こんなことで怯んでいる場合ではないわ。私は百年前から何度も、色んなことを乗り越えてきたのだから)
ぎゅっとドレスを掴み、ローラは目を瞑って深呼吸する。そして目を開いて横にいるヴェルデを見つめる。ヴェルデはローラの瞳をしっかりと見つめ、頷いた。それを見てローラも頷き、正面を見て口を開いた。
「私は確かに、百年前隣国であるティアール国で魔法によって眠り続け、百年後のこの時代にヴェルデ様に起こしていただいた身です」