【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

皇宮魔術師部の人たち

 
 魔術師部は、宮殿敷地内の端に位置している。

 エリアナが滞在しているパール宮殿とは距離があるため、馬車での移動である。長官のトーイは不在のため、お供には護衛のマクス、膝の上にちび獅子、そして大公姿のルードリックだ。

 ちなみにエリアナは解呪師としての衣装はないため、華美ではないドレス姿である。

 マクスは護衛として周囲を警戒し、ルードリックは腕組みをして少し難しい顔つきをしている。

 エリアナは皇宮敷地の広大さを実感しながら外を眺めていた。きらびやかな宮殿が建つところから徐々に樹木が目立ち始め、今は林のような場所を通っている。その先に見えてきたのは。

「わあ、意外に質素な外観なんですね」

 魔術師部のある建物は宮殿とは作りが異なり、華美な装飾のない丸い塔のような形状になっている。塔の周囲は木や草が茂り、一見してなんの手入れもされていないとわかる。

 ──少し怖いかも……。

「ここだけは皇宮の結界から外れているし、特別な力を持つ者が集う場として、一般との明確な違いを持たせたらしい」

 危険な魔術があるという警告。それに魔術師たちは力があるゆえに、あらゆる誘惑を受ける。尊敬の念を抱く者からも野心がある者からも。

「賄賂を渡して違法な魔術を求めようとする貴族もいますからね」

 父親が呪物に毒されていたマクスは険しい表情をする。

「トーイさんたちにも呪物が作れるのですか?」
「彼らは作ることができるが、作らない。自分の中に魔力があるとわかり、国や人を護る信念を持った魔術師となるか、呪術師となって闇の力にのめりこむのか。本人の資質次第だろう」

 ルードリックの眉間に力がこもった。
 元の魔力は同質だけれど、本人の思想によってわかれるということなのか。帝国に潜在する呪術師はどれほどいるのだろう。

「呪術師は根絶しなければなりませんが、呪力は目に見えず感じ取るのも難しいと言います。だからこそ、呪力を目視でき破壊するエリアナさまのお力は、稀有で偉大で素晴らしいのです!」

 マクスの忠誠心が燃え上がり、馬車の中の温度が上がる。
 さりげなくルードリックが窓を開け、ちび獅子がキュインと鳴いた。
< 141 / 223 >

この作品をシェア

pagetop