【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
まもなく馬車が停まり、マクスが先に降り立った。ついでルードリックが優雅に降りる。
ちび獅子を抱いたエリアナが戸口に立つと、ルードリックが無言で手を差し出した。腕の中から飛び立ったちび獅子がきゅるんと瞳を輝かせる。
「あ……その……」
「どうした? 俺のエスコートではダメか?」
眉を下げて微笑み、困ったような表情をするルードリックはレアだ。エリアナの胸がぎゅんと鷲掴みされる。
皇都に来てからというもの、ルードリックは様々な表情を見せるようになった。きれいな顔立ちだから、破壊力がすさまじい。
「そんなことはないでず。緊張してて」
聖女だったころは馬車だろうが、荷車だろうが、どんな高さでも一人で乗り降りしていたのだ。裾を踏んで転んでしまっても、助けるどころか舌打ちが飛んできたものである。
だから貴族の令嬢然とした扱いには慣れず、恐縮しながらそっと手をのせた。
「よろしくお願いします」
──でも、この違いがうれしい。
存在を認められていると、思えるのだから。
歩き始めればちび獅子はエリアナの隣でぱたぱたと飛ぶ。くるくる飛び回る姿は、初訪問の緊張のなか唯一の癒しだ。
「あの、殿下は魔術師部にきたことありますか?」
「何度かある。魔術師たちは騎士団とは違う独特のむさくるしさが……うん、エリアナは絶対に俺やマクスから離れるなよ」
「はい、わかりました」
──離れるなって、危険なの?
エリアナの魔術師のイメージはトーイで出来上がっている。
──凄腕で理知的で誠実だけれど、ひとたび興奮すると早口になるような……。
でも実害はない。
エリアナがここに訪れたのは、解呪師就任のあいさつと、解呪の力が及ぶ範囲を確認するためだ。
──だから、なにも危ないことはないと思うのだけれど?
案内役の騎士が来訪を告げると扉がすーと開いた。
中を覗くが、誰もいない。