【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 ──あの凄まじい熱波に耐えたなんて、すごい。

 応接間で囂々と燃え盛っていた炎の壁を思い出して、エリアナはゾッと震えた。

 話がひと段落して、カトリーヌがパンッと手を叩いた。重い話題から切り替えるときの合図だとエリアナは教えられている。

「ところで、みなさんお読みになりました? 【若き公爵の愁いと最愛】。わたくし、ラストは涙なくして読めませんでしたわ」

 これに真っ先に反応したのはスザンナである。

「まあ! ヨメミレの新刊? 三日前に出たばかりじゃないの。すごいですわ。カトリーヌはもうお読みになったの!?」
「ええ。人気のヨメミレの本ですもの。真っ先に取り寄せて拝読しましたわ」

 カトリーヌは頬を染めて胸を張る。

「内容も面白いのですけどヨメミレは男性か女性かもわからない。『正体不明の作家さま』というのも謎めいていますし、実際に起こったことを取材してお話を膨らめているという噂もあって、そこが人気に拍車をかけているのよね」

【若き公爵の愁いと最愛】は、両親を事故で亡くして若干十八歳で公爵家を継いだ主人公が伯爵家で虐げられていた美しき令嬢を救い、様々な障害を乗り越えながら愛をはぐくんでいく話だという。

「まあっ、カトリーヌ。これ以上のネタバレは禁止ですわっ」

 スザンナが「楽しみを奪わないでくださいませ!」と、悲痛な声を出して懸命に耳をふさいだ。

「スザンナ、ごめんなさい。エリアナもお貸しするからお読みになるといいわ。燃え上がるような恋を疑似体験できますもの」
「わぁ、ありがとうございます、ぜひ」

 流行りの本やスイーツなどの話題に、空気が華やぐ。
 どのお話もエリアナには新鮮で興味深いものだ。読んだことのない本は相槌を打つばかりだったけれど、スイーツはルードリックたちと季節限定品を賞味している。その話を出せば、みんなが耳を傾けてくれた。

 ──楽しい!

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