【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「謝ることはありませんわ。エリアナの心根が優しいのです。とにかく、それらしくなるように特訓するしかありません」
アマンダに慰められているとカトリーヌがポンと手を叩いた。なにかを思いついたようだ。
「そうですわ。こうしたらどうかしら? 憎い相手を前にしていると思うのです。そうすれば、もう少し気迫が出るのではないかしら」
「憎い相手、ですか?」
「ええ、例えば理不尽にもひどく叱られたとか、馬鹿にされたとか。そういうお方いませんの?」
カトリーヌに尋ねられ、エリアナは記憶をたどった。
入れ替わり前のエリアナの人生では日常的にあったはずだけれど、憎いと感じたことは一度もない。ただ残念で哀しいと思っただけだった。
「……そういうお方はいません」
「そうよね、エリアナに悪意を持つお方なんて想像もできませんもの」
「そうなのですか?」
「ええ、こうして、おそばにいると心が穏やかになるのですわ。エリアナの魅力ですわね」
「心がすっきり晴れやかになりますもの」
両隣にぴたーっとくっついてきたふたりはにこにこしている。
──穏やかになるなんて、解呪の力の影響かしら。
それならばエリアナの目指す悪役令嬢には不向きな力ではないだろうか。この作戦は成功するのだろうか。
穏やかになる要素など、エリアナがこの作戦を提案したときにはルードリックもマクスも誰も指摘してくれなかった。
──一気に不安になってきたのだけど……。
「さあ、エリアナ、練習を再開しましょう。難しいことはありません。エリアナらしい悪役令嬢を目指せばいいのですわ」
「私らしい悪役……そ、そうですよね! 頑張りまっす!」
「その意気ですわ。次のセリフは〝あら、失礼。そのドレスが草木に紛れて、まったく目にはいりませんでしたわ〟です」
「あらしつれい……」
「……」
少しはましになってきたが、以前として覇気がないという。向いていないのをはっきりと自覚してきた。前途多難である。
それでも励ましを受けながら何度も練習を重ね、なんとかふたりから合格をもらえたのは声がかれたころだった。