【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「妃候補の任務などさっさと終わらせてしまえ。気分が悪い」
そうだろう。帝国の未来を左右する皇妃の選定に、ろくな教育を受けていないエリアナが参加するのは、皇族の気分が良くないのは当然である。
エリアナはキリッと背筋を伸ばして扇子を広げた。
「ええ、もちろんですわ。このヴァイオレット・コールにできないことはありません。見事に早期解決してみせましょう。どーんとお任せくださいませ!」
胸を張って特訓の成果を見せつけると、ルードリックは一瞬虚を突かれたような顔を見せ、すぐに「くくっ」と笑みをこぼした。
「まったく、たのもしいな。……マリービクス、しっかり頼む」
「しかと、心得ております」
エリアナに向けた笑顔とは違う怜悧な顔をマリービクスに向け、ルードリックは静かに退室していった。
今回はコール伯爵の事件やアカデミーの事件のようにルードリックやマクスはそばにいない。エリアナ一人の闘いである。
不安はないと言えばうそになる。けれどダイヤモンドの髪飾りに触れると、不思議と気力がふつふつと湧いてくる。
──今なら帝国中の悪しき力を破壊できそう!
ふんっと鼻息を吐き、気合一閃、閉じた扇子でパシンと手を叩いた。
「さあ、マリービクス。いきましょう!」
悪役令嬢ヴァイオレット・コール、出陣である。
サロンにはすでに妃候補が勢ぞろいしていた。広い室内で等間隔に用意された席に座っている。背後にはおつきの侍女が一人立っていた。
エリアナが入室すると一斉に視線を向けられて、怪訝そうに眉を顰めたり澄ました表情を崩さなかったり侍女と声を交わしたりと、様々な反応があった。
名家の令嬢たちの圧は針の筵のようだけれど、王国での経験からすれば慣れたものである。悪役にふさわしい平然と澄ました顔で、空いていた席に座った。