【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 エリアナの脳裏に「ははは」と笑ういたずらっこの陛下が浮かぶ。

 しかし皇太后もさすが陛下の母君というべきか、威厳のある姿とは裏腹に大変気さくな人柄で、エリアナが悪役を演じると聞いて「楽しみにしているわ」と目を輝かせたお方だ。
 だから皇太后独自の判断かもしれない。

 皇太后がエリアナに視線を向けたので、気を取り直して優雅に立ち上がった。アマンダたちから指導を受けた通りに自己紹介を始める。

 エリアナはポヤポヤしているけれど元聖女だ。幼いころから衆人環視にさらされてきたため、こんな場面でもあまり緊張することがない。

「アルディナル領コール伯爵家の娘、ヴァイオレットと申します。このたび妃候補に加えていただきましたこと、大変光栄に存じます。前例がないにもかかわらずわたくしが途中で加わったということは、今の候補では心もとないということ。わたくしがもっとも皇妃に近い存在と判断されたと理解しておりますの。せっかく努力なさっているみなさまにはまことに残念なことですが、皇妃の座はわたくしのものですわ。どうぞよろしくおまかせくださいませ」

 微笑んでどやぁと胸を張り、皇太后の御前のためカトリーヌにすすめられた高笑いはやめておいた。

 すました顔で着席して顔を上げると、正面にいる赤毛の令嬢が燃えるような瞳をエリアナに向けていた。その隣に座る茶髪の令嬢は、ぎりぎりと歯ぎしりが聞こえそうなオーラを出している。

 聖女のころ以来に受ける敵意だ。ぽっと出の候補に皇妃の座をさらわれるのは心外だろう。悪役令嬢デビューはひとまず成功のようである。

 皇太后の合図でまずはお茶とお菓子をいただく。運ばれてくるお茶からも悪しき力を感じない。

 ──原因は食べ物や飲み物じゃないのかな?

 それとも今日は仕掛けていないのか。

「では始めましょう。お持ちになったものを順番にご披露なさい」

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