【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 今回のサロンで皇太后が出したお題は【黒】だ。黒いものを持ち寄って楽しむのだけれど、黒ならばなんでもいいわけではない。

 希少性とか、意外性とか、集まった人たちを感心させるものでなくてはならない。それを用意できる手腕があるか、用意できなかった場合にはどう切り抜けるか、試すらしい。

「ではわたくしから。スグレテイル侯爵家の家宝、黒いダイヤモンドです。我が家のダイヤモンド鉱山でも一万に一つ発掘できるかという希少なものです。しかもこれより大きな黒いダイヤモンドは未だ見つかっておりませんの」

 ルシータの侍女がワゴンに乗せられている布を外すと、こぶし大の黒いダイヤモンドがキラキラと光った。候補たちから感嘆のため息が漏れる。

「まあっ、さすがスグレテイル家ですね。わたくしの用意したものなど、かすんでしまいますわ」

 薄く微笑みながら黒いシルクを披露したのは、ジミーネ伯爵家のフロリアだ。

「この黒いシルクは希少な黒い繭からとれる糸を使ってますの。至高の黒と呼ばれ、光沢、風合い、発色、すべて特等の特級品ですわ」

 フロリアのシルクはダイヤモンドに比べると地味だけれど、シルクは衣服に必要不可欠のもの。無難な選択をしたようだ。

 その後も順番に黒いものが披露されていく。エリアナをにらんでいた赤毛の令嬢はワルジエ伯爵家のパトリシアで、レース模様が繊細な黒いガラスの壺を披露した。

「このガラスでレースを編む技術こそ希少で素晴らしいのです。ほかにはない職人技で、ワルジエ家では帝国に必要な人材を育てているのですわ」

 自信たっぷりに微笑んでエリアナを見るので、つい首を傾げた。

「職人の腕は素晴らしいですけれど、ガラスの壺は何色でも応用が利きますから、希少な黒とはいえませんね」

 正直な感想を述べると、パトリシアはキッとエリアナをにらみ、悔し気に唇を結んだ。

「おほほほほ」
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