【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 上品に笑ったのは歯ぎしりオーラを出していた茶髪の令嬢だ。チャライン侯爵家のシラーニャという。

「ヴァイオレットさま、的を射たご意見でしたわ。たしかに、赤でも青でもできますもの。パトリシアさま、残念でしたわね。そこをいくと、わたくしの黒い人魚の涙はとても希少ですわ!」

 人魚の涙という強いワードに、妃候補たちがざわめいた。

 シラーニャは周囲の反応を満足そうに見て、自信たっぷりにワゴンの布を払った。

「チャライン家の領地にある湖では希少な黒い人魚の涙がとれますの。このティアラは我が家に代々伝わる家宝で、これを身につけると願いが叶うともいわれてますのよ」

 フロリアが「まあ」と声を上げた。

「願いが叶うなんて素敵ですわ。それでシラーニャさまはお試しになったことありますの?」
「あら、フロリアさま。わたくしはそんなこといたしませんわ。願いは自力で叶えてこそ、喜びが得られますもの。不確かなものに頼るのは愚か者のすることですわ」

 シラーニャはエリアナをちらりと見て「ふふん」と笑い、つんっと鼻を上げた。

「ヴァイオレットさまは、どんな黒いものをお持ちになったのかしら。楽しみですわ」
「シラーニャさま、期待したらお気の毒ですわ。皇都からアルディナルまで五日以上かかるそうですし、田舎の伯爵家で希少なものを準備できる時間などありませんもの。身に着けているドレスや花がそうだとおっしゃるかもしれませんわ」
「まあ、あれほど大きな口を叩いてらしたのに?」

 ほかの皇妃候補たちが気まずそうな表情を浮かべる。

 ──なんてことなの!?

 エリアナは衝撃を受けていた。

 扇子の陰でヒソヒソプークスクスするシラーニャとパトリシアも悪役令嬢のようである。しかもエリアナより数段レベルの高い意地悪オーラを放っているではないか。まずい。

 ──私よりも、彼女たちが冤罪を受けそう!
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