【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

「なんてことでしょう。まったくたわけたことですわ。わたくしとヒロイニアさまは今日が初対面。名もお顔も存じ上げないお方のお部屋を探し、大切に保管されていたという黒薔薇を見つけ出して盗んだと仰るのかしら?」
「ええ、そうですわ。シラーニャさまとパトリシアさまがおっしゃる通り、ヴァイオレットさまは【黒】を用意なさるお時間は少なかったはず。きっと困窮なさっていたに違いありません。だから誰のものでも……そう、わたくしの【黒】でなくても良かったのです! 皇太后さま、わたくしはたしかに【黒】を準備したのです! ですがヴァイオレットさまが盗み、自分の【黒】として披露しようとしているのですわ。あんまりではありませんか!」

 わああぁぁっと泣き崩れている様子は同情を誘う。自室の花瓶でこんもりと咲いている黒薔薇を思い出して、一株分けてあげたくなった。

 ──ひょっとして、枯れちゃったのかしら?

 今朝になって枯れ薔薇を目にして衝撃を受け、どうするべきか考えあぐねていたところ、エリアナの胸に黒薔薇を発見した。ということだろうか?

 それならば偶然とはいえ、この場を切り抜けようとする手腕は演技も含めて見事なものだ。ひとを盗人扱いするのはいただけないが。

 それとも本当に盗まれたのか。

 皇太后は成り行きをじっと見ているが、『どうするの? エリアナ?』なんて、ワクワクと目を輝かせているようにも感じる。

「まあ、ヒロイニアさまがおっしゃる通りなら、被害はわたくしやルシータさまもあり得たということですの?」

 フロリアが警戒するような視線を向けてきた。

 しかしエリアナにとってこの状況は好都合。エリアナのポヤポヤ感のせいで危ぶまれていた〝罪を擦り付けられる悪役令嬢〟に一歩前進している。

 今回のサロンでは全く期待していなかったのに、想定外の成果に思わずニマッと口角を上げる。エリアナだってやればできるのだ。

< 177 / 223 >

この作品をシェア

pagetop