【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

「これは我が兄、マクスから〝大公殿下に譲っていただいた〟と贈られたものですわ。タウンハウスでは薔薇ばかりか、チューリップにカーネーションも黒いそうですの。歴代の大公殿下が黒い花を望み、庭師たちが努力を重ねた結果だそうです。残念ですが、ヒロイニアさまの黒薔薇ではございませんの」

 胸元に刺している黒薔薇は、マリービクスがドレスに合うからと言ってコサージュにしてくれたものだ。

「それではヴァイオレットさまのお兄さまが、わたくしの黒薔薇を!」
「ヒロイニアさま、落ち着いてください。マクス・コール卿は解呪師さまと一緒に褒賞をいただいていました。それに大公殿下の信頼厚き騎士とも伺っています。妹のためとはいえ、そんな立派なお方が盗みを働くとは思えません。別のお方が犯人、もしくは、黒薔薇に不測の事態が起こったため隠されたのでしょう。もう一度、お調べになるべきですわ」

 ルシータが冷静な声で意見を述べ、周囲に同意のムードが広がる。ヒロイニアはルシータをにらむようにして爪を噛んでいた。

「兄もわたくしも無実です。なぜわたくしがヒロイニアさまの黒薔薇を盗む必要があるのでしょうか。わたくしが手配した【黒】は、誰のものよりも特別ですのに」

 ワゴンの上に乗せたバスケットの蓋をマリービクスが開け、エリアナは丁寧に中身を取り出した。

 エリアナの手で両脇を抱え上げられ、ぷら~んとぶら下がった【黒】。きゅるるんっとした赤い瞳、背に生える小さな羽、モフモフの体、ぷらっとさがるしっぽ。いつもエリアナを癒してくれる、ちび獅子である。

 すかさずフロリアが「まあ!」と声を上げた。

「かわいらしいわ。でも、ヴァイオレットさま。そのぬいぐるみのどこが特別なんですの?」
「フロリアさま、この子はぬいぐるみではありませんよ。アルディナル大公殿下からお借りした雷撃の黒獅子。大公家の守護獣ですわ」

< 178 / 223 >

この作品をシェア

pagetop