【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「あら、ヴァイオレットさま。探らせようとしないのは、やましいからでございましょう!」
エリアナの忠告を無視したヒロイニアがニヤッと笑い、勇敢にもつかつかと歩み寄った。威厳ある守護獣の風貌に一瞬ひるむも意を決して手を伸ばす。
「魔道具はきっと、このモフモフの鬣の中にあるはずですわ!」
ヒロイニアの腕がぐわっと伸びた瞬間、守護獣がぶるっと身を震わせた。ピリピリと小さな稲妻がちび獅子のまわりを包む。
「グゥルルルルッ」
「ひいぃっ」
ちび獅子が歯をむき出して威嚇すると、ヒロイニアは真っ青になって慌てて手を引っ込める。
「ひどいですわ。こんな危険で恐ろしいものを皇太后陛下のサロンに持ち込むなんて」
ヒロイニアは震えながら後ずさり、へたり込むようにして席に戻った。ようやく本物だと納得してくれたらしい。
──でも、勇気があって行動力の有るお方。無謀だけれど、ヒロイニアさまも皇妃にふさわしいのかもしれない?
「わたくしは忠告しました。無視して危険を冒したのはヒロイニアさまです。ちびちゃん、落ち着いて。もう大丈夫だから」
威嚇が治まらないちび獅子の鬣をモフモフすると、すぐに落ち着いて甘えるように顔を寄せる。ヒロイニアの顔が驚愕に変わった。
「うそですわ……こんなの、ありえない……」
「わたくしは希少で特別な【黒】を披露したにすぎませんし、守護獣を披露することは事前に皇太后陛下から許可をいただいています。ヒロイニアさまは盗難に遭われて【黒】をご用意できなかったのでしょう? お気の毒ですわ。後ほどわたくしの部屋でこんもりと咲いている黒薔薇を一輪差し上げますから、元気を出してくださいな」
「なっ、そんなもの、いりませんわ! わ、わたくしだって、帰宅すれば温室でわんさか咲いていますもの!」
ヒロイニアは頬を真っ赤に染め、つんと顔をそむけた。