【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「見ていましたが、なにが起こったのかよくわかりませんわね」
シラーニャがぽそっとつぶやいた。
たしかに呪術が発動したのに事なきを得たのは、俊敏に動いていたマリービクスがしっかりとヒロイニアの体を捕まえ、支えていたからだ。
「大丈夫です。お嬢さま。ジャナイナ伯爵令嬢にお怪我はないようです」
「……マリービクス」
──よかった……。
ほっと胸をなでおろしたが、ヒロイニアは青ざめた顔でガタガタ震えている。
「あの、あ、なにかが……わたくしの足を掴んで……」
「ヒロイニアさま、気のせいです。ここにはなにもありませんもの」
そっと肩に触れて癒しの力を送り込むと顔色が良くなり、震えも止まった。ヒロイニアは怪訝そうな顔を向ける。
「あなた、なにをしたの?」
「なにもしてません。さあ、お茶会に行きましょうか。こんなところで躓くなんて、ヒロイニアさまはずいぶん危なっかしいお方ですね。あなたこそ、一番にわたくしのひな鳥になるとよろしいわ」
「だ、誰がなるものですか! お先に行きますから!」
ツンと顔を上げて侍女と一緒に階段を下りていく。ヒロイニアらしさが戻って安堵の息を漏らすとルシータがじっと見ていた。
「わたくしは、喜んでヴァイオレットさまのひな鳥になりますわ」
そう美しく微笑む。
賢いルシータにはヴァイオレットの正体がバレているのかもしれない。
「おほほほ。殊勝ですわルシータさま。では行きましょうか。シラーニャさまとパトリシアさまも、ほかの方々もひな鳥ですね」
「ええ、なにがあるのか知りませんけど、ルシータさまがそうなさるならご一緒しますわ」
少しのミスで誰かがけがをしかねない状況になっている。エリアナはまったく気が抜けなくなった。
──皇妃になりたいからって、いくらなんでも【転落】はやりすぎだわ。
二度と失敗はしないと心に決め、お茶会が行われる庭園に向かった。