【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
陛下のもとに呼ばれる順番は知らされていないので、候補たちはそわそわしている。勇猛なヒロイニアでさえ緊張を隠せずに何度も深呼吸をしていた。
──でもルシータさまは、さすが落ち着いているわ。
「ヴァイオレット・コール嬢、陛下がお呼びです」
護衛騎士に告げられて、知らずに「ひゅっ」と息をのんだ。
──まさか一番に呼ばれるなんて。
候補たちの視線がエリアナに集中している。ギロっとにらむ者もいれば、安堵するような視線を向ける者もいる。
ガゼボの中で皇太后と一緒に待つ陛下の姿は皇帝としての威厳がたっぷりあってなんとも近寄りがたい。
──はわわ、あそこに混じるの? 無理!
でも悪役令嬢は気後れなんてしていられない。いつでも根拠のない自信を持ち、高慢にふるまって、ほかの候補に意地悪をする役目なのだ。今こそ奮起どころである。
しゅばっと扇子を出して口元を隠した。
「おほほほ。わたくしが候補の中でトップなのは、陛下もよくご存じなのですね。また皇妃の座に一歩近づいたかしら」
しゃなりしゃなりと歩いてガゼボの前で礼を取ると、「挨拶は良いから早く来い」と手招きをされる。「失礼します」と着席すれば、陛下はキラキラの笑みを浮かべていた。
「今回私が参加したのは、ルードに先んじてそなたの悪役令嬢ぶりを見たかったのもある。母上が楽し気に話すゆえ、ことさらに気になるではないか。さきほどのセリフもなかなか悪役らしく、よかったぞ」
クククと笑う。
「そうでございますか?」
「うん、しかし普段の姿の方が数倍良いのは言うまでもないな」
「お、恐れ多いことです」
エリアナはなんとかローズ茶をいれて二人に呈し、陛下はローズの香りを楽しみ一口飲んだ。
「美味いな。それに気分がすっきりする」
「ほんとうに。さわやかで落ち着くわ。ありがとうエリアナ」
「いえ、お喜びいただき、うれしいです」