【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 どの候補か問われ、エリアナが小声で伝えると「ほぅ、ちびっ子ルードの情報通りだな」とのたまい、そっと手を取られてぎょっとする。

「あ、あの陛下、手を……?」

 快活な陛下の青い瞳がわずかな熱を帯びた。

「ほんとうにエリアナは優秀な解呪師だな。どうだ? 私の妃になる気はないか?」

 指先に唇を落とされてぎょっとし、かぁっと頬が熱くなる。

「エリアナならばスサノーンも歓迎するのだ」

 ──どうしよう……お戯れが過ぎますというべき?

「残念だがヘイブン、今彼女は〝ヴァイオレット・コール〟だ。手を放せ」
「……おっと、そうだったな。しかし冗談ではないのだが、仕方ないな。チビッ子ルードのくせに、まったく抜け目のない奴だ」

 ニッと口角を上げた陛下が手を放したのですぐにひっこめる。

 ──このお方は、ほんとにいたずら好きなのだから!

 冗談ではないかもしれないが、本気ではないのだ。エリアナの反応を楽しんでいると言うべきか。

「そろそろお時間ね」

 空気を読んだ皇太后が扇子をパシンと叩き、にっこり笑う。

「エリアナ、ごくろうさま。引き続きよろしくね。大公殿下も、また会いましょう」

 皇太后がにこにこしてルードリックに手を振ると、礼を取り無言で姿を消した。エリアナも立ち上がって礼を取る。

「失礼いたします」

 ガゼボから出ると一気に気が軽くなった。それほどに皇族の圧が強かったのだ。皇妃になった人は、日常的にこの気にさらされる。よほどの胆力がなければ務まりそうにない。

「お嬢さま、おつかれさまでした」

 ──ええ、ほんとに疲れました……。

 マリービクスが小声で「見事なお振舞いでございました。ゆえにご注意ください」と伝えてきた。

 すぐに意味はわからなかったが、席についたエリアナに向けられた視線で理解した。
 驚愕、嫉妬、諦念。瞳に涙を浮かべている候補もいる。
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