【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
──陛下があんな態度をとるから!
誤解だと伝えたいが伝えてはいけない。エリアナの役目は犯人を煽ることなのだから。頬が引きつるのを感じながら、なんとか余裕の笑みを作っておいた。
でも最初に終えたおかげで、呪物の警戒がしやすくなったのは幸いだ。犯人と思しき候補からは変わらずに呪術の気配がにじみ出ている。
「動くな!!」
ガシャンと陶器が割れる音がし、にわかにガゼボが騒がしくなった。
「まあ、なにごとでしょう?」
真っ先に反応したのはフロリアだった。
候補たちの視線がエリアナから外れ、ガゼボに集中する。
中ではモブダナー伯爵令嬢が震え声をあげ、陛下の護衛騎士が抜き身の剣を構えていた。切迫した事態に、候補たちは不安げに視線を交わす。
「お待ちください! 陛下! どういうことでございましょう。わたくしはお茶を入れただけです!」
「私は守護獣の加護を得ているゆえに、鼻が利く。そなたが茶になにを混ぜたのかわかるのだ。なにもしておらぬと申すなら、そなたが先に茶を飲んで見せよ」
モブダナー伯爵令嬢は青ざめながら震える指をカップに添えた。
エリアナの目には、カップの上で【私に惚れる】のピンク文字がふわりふわりと誘うように踊っているのが見える。
──入れた本人が飲んだらどうなるのかしら?
両陛下は鋭い視線を向けてはいるが、そこに関心を持っているようにも思える。
呪物を体に取り込んでしまったグレッタは肌がかぶれていった。惚れ薬もそうなるのだろうか。
モブダナー伯爵令嬢は意を決したように顔を上げて、青ざめたまま引きつった微笑みを作った。
「じ、じつは、このお茶はコール伯爵令嬢のヴァイオレットさまからいただいたものなのです。わたくしの領地からの馬車が遅れて用意することができず、困っていたところに譲っていただいたのです」