【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
とある呪術師の皮算用
──おかしい、おかしい、絶対に変よ。
どこに呪物を仕掛けても発動しないなんてありえない。
──今までただの一度だって失敗したことがないのに。
呪術の才があるのを発見したのは十歳になったときだった。領地の町に出かけたとき、両親とはぐれてたまたま迷い込んだ路地の店で見つけた本がきっかけである。
その店は少し異様なものが並べられていて、店主は黒づくめの服で父親よりも年を取っていた。
「その本が気に入ったなら、あげるよ」
不気味な笑顔に見えて、正直言って怖いと思った。
けれど本には興味があったし、腕に抱えて逃げるようにして店を出た。
路地に迷い込んでいたはずなのに、店を出たら両親がいる広場だった。
はぐれた娘を探している様子もなく、腕に抱えている本を見とがめられることもなかった。
不思議なことだったけれど、幼かったため深く考えることもなかった。
本の中に描かれた魔法陣が美しくて、見よう見まねで描いて窓辺に置いておいた。翌日に小鳥が魔法陣の中で息絶えていたのである。
本には『いけにえの呪術』とあった。