【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
──なんなのよ、この子。袖の中の呪物が落ちちゃうじゃない! 放しなさいよ!
「まあ、かわいいらしい。どちらのご子息でしょう?」
イラっとして追い払おうとしたところ、侍女たちの声で我に返った。やさしい天使のような仮面を顔に張り付ける。
「わたくしになんの用かしら?」
「お姉さんも狩りをするの?」
幼い口調だけれど、しっかりと品がある。高位貴族のご令息だろう。
──幼い子どもを危険な場所に連れてくるなんて、非常識な親ね。
「残念ながら、わたくし弓矢は得意じゃないのよ。あなたは一人で来たの? おつきの人は?」
「ぼくのパパはあっちにいるよ。難しいお話をしててつまんないから、こっそり離れて、強そうな人を探すことにしたの」
「強い人? それが、わたくしだとおもったの?」
「うん! だってさっき、獲物を狙うようなすっごく怖い目つきしてたから、強そうってわくわくしたの。お姉さんといたらすごい狩りが見れるって。でも弓矢できないんだね。ぼく間違えちゃったみたい!」
令息は無邪気にいうから、頬がぴくぴくと引きつった。
「……わたくしはそんな怖い目をしないわ。あなたの見間違いね。あなたのパパのほうが立派な獲物を狩れるから、早く戻ったほうがいいわ」
「うん、そうだね! 怖い目つきのお姉さん! ばいばい!」
令息は無邪気に笑って去っていった。
──なんっなのよっ! 慈悲深いわたくしのどこが、怖いっていうのよ!!
ぎりっと奥歯をかんで扇子を握りしめるとメキッと音がした。
「ずいぶん失礼なご令息ですね。躾がなっていません」
──っ、いけないわ。落ち着いて、柔らかく微笑まなければ。
「そうです。お嬢さまは天使のようにお優しいのに怖いだなんて。保護者に抗議するべきです」
憤慨した侍女たちが騒ぐから悪目立ちしている。失礼な令息には腹が立つが、こんな話題で騒がれるのはまずい。