【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「あなたたち黙りなさい。幼い子のことだもの。目くじらを立てることはないわ」
「まあっ、無礼されたというのに女神さまのような微笑みを! お嬢さまったら、なんておやさしいのでしょう!」
「ほんとうに天使です。私たちはお嬢さまにお仕えできて幸せです。お嬢さまほど皇妃にふさわしいお方はいらっしゃいません!」
侍女たちを軽くなだめると大げさに感動している。
やさしい天使。
皇妃になるべき人。
──そうそう、わたくしの話題はこうでなくては。もっと騒ぎなさい。遠くにいる陛下のお耳にも届くように、わたくしの慈悲深さを大声で宣伝しなさいな。
しかし陛下は上位貴族や近衛騎士に囲まれているため一妃候補の評判など耳に届きそうになかった。
警戒が強くて近づくことも難しいし、これでは陛下に怪我をさせて呪術で治療する作戦は実行できそうにない。
計画通りに進まない苛立ちを必死に抑えた。
「いいわ」
あんな生意気な子ども、ヴァイオレットたちと一緒に呪物の餌食にすればいいのだから、なんということもない。
いつでも任意の場所に貼り付けられるよう、袖の中から呪物を取り出した。さっそく侍女にばれないようにそろそろと移動して、ヴァイオレットのそばに立つ木の幹に呪物を張り付ける。
夜な夜な呪力を限界まで上げて丹精込めて制作したヴァイオレット・コール殺。根元からぽっきり折れた木がヴァイオレットを下敷きにするだろう。
ヴァイオレットがそのまま動いていけば、呪物が発動……。
しない!?
ヴァイオレットは「おーほっほっほ」と笑いながらすい~っと呪物の前を素通りして、ほかの候補たちをひな鳥にしている。
あんぐりと口を開けた。
そんなバカなことがあっていいのか。
「お嬢さま? どうかなさったのですか?」
「な……なんでもないわ。さあ、狩りが始まるわよ……わたくしたちも行きましょう」