【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
眉を顰める皇太后に、自分の力を見せつける。あらかじめ描いておいた盾の魔法陣に杖を当て、一気に呪力を流し込む。
ブンッと音を立てて広がった黒い呪力の盾に天幕の中がどよめいた。この盾は、呪力を流し続ければ消えることはない。
「あなた、その力は……?」
「皇太后陛下、今まで隠しておりました。このとおり、わたくしにはほかの令嬢たちにはない力がございます。わたくしならば、陛下も、国も、護ることができますわ」
──密かに、ほかの国を攻撃することも。
黒くてまがまがしい盾を目の当たりにし、天幕の中は誰も声を発しない。皇太后は強い視線を向けてくるだけだ。
「クエェェエエェェェ!!」
「ガァオオオオォォオォォッ!!」
体の芯まで凍るような獣の咆哮が響き、天幕の中が恐怖に陥った。
「ひいぃぃっ」
「きゃあぁっ」
みな互いに抱き合い、涙をこぼす者もいる。
「みなさま、なにが起ころうと平気ですわ。このわたくしがいますもの。この盾をご覧になって!」
「そ……それがあれば、獣たちにおそわれることはないのですか?」
見知らぬ夫人の震えながらの問いかけに、にっこり笑顔を返した。
「当然ですわ」
今ここで余計な人も護ることになったのは計算外だが、天幕の中にいるのは高位貴族の夫人ばかりだ。人脈を得たと考えれば無駄ではない。
それにヴァイオレットとルシータは天幕にはいない。ということは、獣の爪か矢でけがを負っていることだろう。
──いい気味!
今ここで高笑いできないのが残念でならない。皇妃の座を確実にするまでは、可憐で慈悲深いイメージを崩してはならない。
「ルシータさまとヴァイオレットさまがいませんわ」
取るに足らない無能妃候補が不安そうな声を出す。
──たしか、ミカキーテ家の人ね。
「おふたりとも魔物の餌食になってしまったのでしょうか」
「そんな……っ」