【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 候補たちは悲痛な声を出す。見かねたご夫人たちが声をかけ、背中をさすったりして慰めている。

 無能な者は身を寄せ合うことしかできない。

 ──滑稽なこと。

 湧き出そうな笑いをかみ殺し、必死に神妙な顔を作る。

「みなさま、おふたりはきっと無事ですわ。騎士たちを信じましょう」

 天幕の空気が重く、ひりひりするような緊張感に満ちている。ヴァイオレットとルシータは天幕にくる気配もない。

 呪物にかかったすべての武器がヴァイオレットとルシータに向かうようにしたのだ。生きてはいまい。

 血に濡れて息絶える姿を思い浮かべれば震えるほどの喜びがわく。

 ──勝ったわ!! これで、皇妃はわたくしよ!!

「あら? なんだか、外が静かですね?」
「ほんとうに。さっきまで、獣の声やいろんな音がしていましたよね?」
「あなたのその力は音も防ぐのかしら?」

 そういえば、やけに静かだ。巨大化した獣が大量に襲ってきたというのに。足音や唸り声すら聞こえてこない。

「ひょっとして、みんな全滅してしまったの!? すぐにここも襲われるわ!!」

 誰かが悲痛な声を出すと、天幕内の空気が凍り付いた。

 ──思惑通りよ!

 外の騎士たちが牙に倒れ、獣たちが襲ってくるのは想定内である。呪術師の力を発揮して皇太后を護り、陛下の感謝を受けて皇妃に指名される寸法だ。

「皆の者落ち着きなさい。外は大丈夫ですよ」

 皇太后の毅然とした声でざわめきが治まった。皇太后は不安も心配もしていないように見え、皇族として有事の際に取るべき態度ではあるが、妙に違和感があった。

 ──自信があるとでもいうの?

 内も外も静まり返っている。
 外は、まるで誰もいないかのように、ひっそりして……。

 ──獣も人も消えた? そんなバカなことってある?

「わたくし、見てまいります」

 魔法陣に流し込む呪力を調節して盾を小さくし、そっと出入口の膜をめくった。

「これは……どういうことなのよ!?」

 予測もしていなかった光景を目にしたのだった。

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