【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
この候補はいつも観察するような視線を向けていたが、今は親愛の情が見え隠れしている。どういう心境の変化なのか、謎である。
「エリアナさま、そろそろ移動を」
マリービクスに促され、エリアナはピッと気を引き締めた。今日は結界外での活動なので、なにが起こるかわからない。
皇宮では無効となる危険な魔術も発動可能となれば、先のルードリックの心配ぶりもうなずける。
ダイヤモンドの髪飾りにはどんな仕掛けがあるのか知らないけれど、身を守ってくれると思う。
「さあ、みなさま。行きましょうか」
エリアナは悪役令嬢とその取り巻きのごとく、候補たちを引き連れて森の広場に入った。
広場はたくさんの人でごった返していた。
陛下は近衛騎士と貴族の当主たちに囲まれているが、その中にルードリックの姿はない。
例の妃候補は侍女たちとともにゆっくりと広場に入ってきた。彼女の袖のあたりからうっすらと黒い靄が出ている。
──巨大、凶暴、ヴァイオレット殺、ルシータ殺……。
なんとか解読できた呪いの数々に背中には冷たいものが流れた。
いろんな文字がうようようごめいていて、気分が悪くなりそうだ。
あれ程までして皇妃の座を得たいのか。そっと目を反らして息を吐いた。
袖が真っ黒に染まっているのに所持している本人が平気そうなのが余計に不気味に映った。
「ひどくなってた……」
先日のガゼボ茶会のときより、明らかに彼女の闇が深くなっている。人に気づかれないのが不思議なほどだ。
妃候補たちが集まっているのに気にも留めず、行動をともにしようとしないのは、呪物をしかける隙がなくなってしまうからだ。
ひとりでいたら却って目立ちそうだけれど、今日は貴族がたくさん集まっている。人に紛れてこっそり動くつもりだろう。
そんな彼女のところに、金髪の幼児がトコトコ走って近づいていった。
──殿下、またおひとりで!