【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「皇帝陛下。妃候補十名、参上いたしました。美しい青空の良き日に恵まれたことお喜び申し上げます」
陛下の前で礼を取る。十色の色鮮やかなドレスの裾がふわりと揺れ、美しい絵面が出来上がった。周囲からほぉっと感嘆の声が聞こえてくる。
「うむ。そなたらも楽しむがよい」
「皇帝陛下、わたくしたちに獲物をお与えくださいませ」
エリアナのストレートな物言いで、陛下は声を立てて笑った。
「ははははは。いいだろう。とびきりいい獲物をとってそなたらに与える。期待して待っていろ」
狩りの始まりの合図が鳴り響き、腕に覚えのある猛者たちは森の中に分け入っていった。女性陣は彼らが戻るまで広場でお茶会だ。ぞろぞろとテーブル席に移動していく。
広場の中心に皇族と高位貴族たちが休息する天幕が張られ、それらを囲むように夫人や令嬢たちのお茶会席が設けられている。
広場の外側に向かうほど下位貴族の席になるようだった。
妃候補であるエリアナたちが使用する席は、皇族の天幕の隣である。そこからは森の様子がよく見え、誰が一番に獲物を狩って戻ってくるかが話題の中心となる。
すでに皇太后は高位貴族のご婦人方とともにテーブルに着いて談笑していた。
エリアナたちも席に落ち着き、おしゃべりを始める。
「それはそうと、ずっと単独行動していらっしゃるあのお方、さっきから森の中を歩き回っていらして。怪しさ満点ですわね?」
「そうですわね。誰にも見られていないとお思いなのでしょうか?」
「なにをしていらっしゃるのかしら?」
「さあ?」
ひそひそ声で視線を向ける先では、例の妃候補が木々の間で見え隠れしていた。彼女のドレスはあざやかなひよこ色なので、緑の中ではとても目立っていた。
──すごい。どれだけ呪物を仕掛けたのかな。
エリアナの目に映る森はどろりとした黒い文字でいっぱいだ。
『例の候補が事を起こすまで、エリアナはなにもするな』
頭の中でルードリックの声が響くけれど、これから起こることを想像すればどうにもそわそわしてしまう。