【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
──どうか、けが人が出ませんように。アクエラさま、みんなをお守りください。私に、みんなを護る力をお授けください。
心の中で祈り言葉をささげると聖なる力が身の内に湧いてくる。聖女だったころにははるかに及ばないけれど、これで多少の傷をいやすことができる。
少しホッとした、そのとき。
「ぐおぉぉぉおおぉっ」
森の中から獣の咆哮が響いてきた。
「あら、大きな獣も住んでいるのですね」
「きっと獣寄せ魔道具の効果ですわね」
「勇猛な殿方の腕の見せどころじゃありませんか」
「楽しみですわね」
皇太后と席をともにしているご夫人たちは笑顔で語らっている。妃候補たちも同様だ。対してエリアナはざわざわする心を必死になだめていた。
──どうしよう。呪いの気配がどんどん濃くなっていく。
「グワアアァオォォ」
「ギイィィ」
その凶暴な声はどんどん広がっていき、最初はのんびりお茶を飲んでいたご夫人たちがにわかに動揺し始めた。それは電波のように伝わっていく。
「どうしたのでしょう」
ルシータが緊張した面持ちで森の暗がりを見つめていた。山のような物体がのそりのそりと蠢いて広場に近づいてくる。
「あれはなに!?」
「魔物です!! 皇太后陛下、ご夫人、子女方は天幕の中へお急ぎください!」
「きゃぁぁっ」
「この森に魔物が出るとは!」
「逃げろ!!」
「戦える者は剣を持て!」
立ち上がって悲鳴を上げる者、魔物の吠え声を耳にして恐怖のあまり失神する者、広場は一瞬にしてパニックに陥った。
のそりのそりと動いて見えていた山のような巨体はツノグマだった。呪物で普段の三倍にもなったそれは広場に来ると俊敏に動いて、凶暴に人を攻撃している。
「うわぁぁっ」
「にげろ!」
「みなさま、天幕の中へお早く!」
「お急ぎください!」
エリアナは候補たちを天幕へ向かわせたが、ひとりだけ反対側へ足を向けている。ルシータだ。騎士たちが集まっている方へ急いでいく。