早河シリーズ第六幕【砂時計】
自分よりも幾分上背のある栗山を彼は乱暴に引き寄せ、怒りを含んだ声で告げた。
『もう一度言うが、裏切り者は真紀じゃない。あんた達が追うべき相手は……』
その先の言葉を言い終えた矢野は掴んでいた栗山の襟を離す。
栗山は矢野に乱された襟を直して前髪を掻き上げた。彼は先ほどの矢野の言葉を頭の中で反芻する。
『……今の情報は確かか?』
『ある筋からの有力な情報だ。信用度は五分五分らしいが』
『小山刑事にはこの話は?』
『真紀には言ってねぇよ。今はまだその時じゃない』
矢野は栗山に背を向けて、右側のポケットに入れたカフェオレの缶を握り締めた。
『あのさ、このまま真紀の監視は続けてもらえる?』
『小山刑事の監視期間は直に解かれる。今のお前からの情報がなくても彼女の身辺に不審な動きは見当たらなかったからな。お前としても監視が解けるのは歓迎じゃないか?』
矢野の真意がわからない栗山は眉をひそめている。
『真紀が裏切り者の容疑をかけられて監視されるのは嫌に決まってんだろ。でも監視されている間は少なくとも身の安全は保証される。俺が真紀の側にいない時も……』
『小山刑事が狙われる可能性を心配しているのか』
『当たり前だろ。早河さんが過去に逮捕した奴らが殺された。奴らは次は早河さんや早河さんの周りの人間を狙ってくる』
握り締めた缶からじんわりと温かさが伝わる。栗山は身動ぎせずに矢野の背中を見ていた。
『それならお前が最も危険だろう? 情報屋の矢野一輝は早河元刑事の右腕だと聞いているが』
『右腕ねぇ。まぁ、さしずめ俺はワトソン君かもね』
矢野は肩の力を抜いて天を仰ぐ。確実に空は明るくなってきている。そろそろ車に戻らなければ真紀が不審がるだろう。
『でも俺が早河さんの右腕だって解釈、当たってるけど本当は違うぜ』
『何を言いたいか意味がわからない』
『確かに早河さんに協力している俺や真紀もカオスに狙われる危険はある。だけど一番危ないのは……香道なぎさ』
顔だけを栗山に向けた矢野と栗山の視線がぶつかる。栗山は二度頷いた。
『なるほど。早河の助手の女か』
『それもただの助手じゃないからさ。奴らが早河さんの弱点を突いてくるとしたら真っ先に狙われるのは彼女だ。もしそっちで警護できるなら香道なぎさの警護も頼める?』
『……検討しておく。小山刑事の警護も考えておこう』
『どうも。じゃーね。公安さん』
『俺の名前は栗山だ』
『ははっ。あんた無骨な顔してるけどけっこういい奴だな』
栗山に軽く手を挙げて矢野は来た道を戻った。
『もう一度言うが、裏切り者は真紀じゃない。あんた達が追うべき相手は……』
その先の言葉を言い終えた矢野は掴んでいた栗山の襟を離す。
栗山は矢野に乱された襟を直して前髪を掻き上げた。彼は先ほどの矢野の言葉を頭の中で反芻する。
『……今の情報は確かか?』
『ある筋からの有力な情報だ。信用度は五分五分らしいが』
『小山刑事にはこの話は?』
『真紀には言ってねぇよ。今はまだその時じゃない』
矢野は栗山に背を向けて、右側のポケットに入れたカフェオレの缶を握り締めた。
『あのさ、このまま真紀の監視は続けてもらえる?』
『小山刑事の監視期間は直に解かれる。今のお前からの情報がなくても彼女の身辺に不審な動きは見当たらなかったからな。お前としても監視が解けるのは歓迎じゃないか?』
矢野の真意がわからない栗山は眉をひそめている。
『真紀が裏切り者の容疑をかけられて監視されるのは嫌に決まってんだろ。でも監視されている間は少なくとも身の安全は保証される。俺が真紀の側にいない時も……』
『小山刑事が狙われる可能性を心配しているのか』
『当たり前だろ。早河さんが過去に逮捕した奴らが殺された。奴らは次は早河さんや早河さんの周りの人間を狙ってくる』
握り締めた缶からじんわりと温かさが伝わる。栗山は身動ぎせずに矢野の背中を見ていた。
『それならお前が最も危険だろう? 情報屋の矢野一輝は早河元刑事の右腕だと聞いているが』
『右腕ねぇ。まぁ、さしずめ俺はワトソン君かもね』
矢野は肩の力を抜いて天を仰ぐ。確実に空は明るくなってきている。そろそろ車に戻らなければ真紀が不審がるだろう。
『でも俺が早河さんの右腕だって解釈、当たってるけど本当は違うぜ』
『何を言いたいか意味がわからない』
『確かに早河さんに協力している俺や真紀もカオスに狙われる危険はある。だけど一番危ないのは……香道なぎさ』
顔だけを栗山に向けた矢野と栗山の視線がぶつかる。栗山は二度頷いた。
『なるほど。早河の助手の女か』
『それもただの助手じゃないからさ。奴らが早河さんの弱点を突いてくるとしたら真っ先に狙われるのは彼女だ。もしそっちで警護できるなら香道なぎさの警護も頼める?』
『……検討しておく。小山刑事の警護も考えておこう』
『どうも。じゃーね。公安さん』
『俺の名前は栗山だ』
『ははっ。あんた無骨な顔してるけどけっこういい奴だな』
栗山に軽く手を挙げて矢野は来た道を戻った。