早河シリーズ第六幕【砂時計】
原の祖父母も、祖父は5年前に他界し、認知症を患う祖母も施設に入所している。
その死を誰にも知られず、誰かに最期を看取られることもなく、犯罪組織に命を捧げた男は自らの手で命を終わらせた。
『上野さん、大丈夫ですか?』
『さすがにキツイな。原がケルベロスだったことだけでなく……もうあいつはいない』
上野にとって原は信頼していた部下だった。原の正体が犯罪組織の人間だったとしても原が上野の部下としてこの数年を過ごした事実は変わらない。
『俺も、原がケルベロスだと確証付ける証拠が集まるたびにこれは全部嘘であって欲しいと思っていました。俺が知ってる原昌也はふざけた軽いノリの人間だったけど……刑事としては優秀でしたし、俺は原昌也って人はけっこう好きでした』
早河はキッチンに立つなぎさの後ろ姿を見つめた。原がなぎさにしたことは許せない。カオスのケルベロスとして彼が犯してきた罪も、父親を殺したことも許されることではない。
原は母親が殺される瞬間の何に魅入られたのか。何が彼を凶行に駆り立てた?
人間は三種類に分けられると原は言った。
殺さない人間、殺す人間、殺される人間。
そこにナイフがあってもそのナイフで人の命を奪う人間と奪わない人間の違いは何?
(人を殺す危うさ……俺にもそんなものがあったのかもしれない)
誰もが、人を殺す側に回る危険を秘めている。その最たるものが、大切な人の命が理不尽に奪われた時の犯人への復讐心だろう。
浮気をした恋人や浮気相手を殺してしまうことも、育児ノイローゼの親が解放を求めて子どもの首を絞め殺してしまう可能性だってある。
実は誰もが、“人を殺してしまう側”にいつ豹変してもおかしくない。
早河が人を殺さない側に居続ける理由は、彼の手を握って繋いでいてくれる人がいるから。あちら側に行かぬよう、こちら側で手を握っていてくれる大切な人が早河にはいる。
原昌也には彼の手を握って離さないでいてくれる大切な誰かがいなかった。
原の手を取った人間はキングの貴嶋佑聖。彼が人を殺す快感に取りつかれた原を、ケルベロスとしてあちら側に引き込んだ。
鬱々とした思考に頭を支配されていた早河はリビングに顔を見せたなぎさの笑顔にホッとした。
「ご飯、上野さんも食べて行ってください。今日はお鍋なんです」
『ありがとう。いただくよ』
それは上野も同じだったようで、二人の男はなぎさの笑顔に救われていた。
その死を誰にも知られず、誰かに最期を看取られることもなく、犯罪組織に命を捧げた男は自らの手で命を終わらせた。
『上野さん、大丈夫ですか?』
『さすがにキツイな。原がケルベロスだったことだけでなく……もうあいつはいない』
上野にとって原は信頼していた部下だった。原の正体が犯罪組織の人間だったとしても原が上野の部下としてこの数年を過ごした事実は変わらない。
『俺も、原がケルベロスだと確証付ける証拠が集まるたびにこれは全部嘘であって欲しいと思っていました。俺が知ってる原昌也はふざけた軽いノリの人間だったけど……刑事としては優秀でしたし、俺は原昌也って人はけっこう好きでした』
早河はキッチンに立つなぎさの後ろ姿を見つめた。原がなぎさにしたことは許せない。カオスのケルベロスとして彼が犯してきた罪も、父親を殺したことも許されることではない。
原は母親が殺される瞬間の何に魅入られたのか。何が彼を凶行に駆り立てた?
人間は三種類に分けられると原は言った。
殺さない人間、殺す人間、殺される人間。
そこにナイフがあってもそのナイフで人の命を奪う人間と奪わない人間の違いは何?
(人を殺す危うさ……俺にもそんなものがあったのかもしれない)
誰もが、人を殺す側に回る危険を秘めている。その最たるものが、大切な人の命が理不尽に奪われた時の犯人への復讐心だろう。
浮気をした恋人や浮気相手を殺してしまうことも、育児ノイローゼの親が解放を求めて子どもの首を絞め殺してしまう可能性だってある。
実は誰もが、“人を殺してしまう側”にいつ豹変してもおかしくない。
早河が人を殺さない側に居続ける理由は、彼の手を握って繋いでいてくれる人がいるから。あちら側に行かぬよう、こちら側で手を握っていてくれる大切な人が早河にはいる。
原昌也には彼の手を握って離さないでいてくれる大切な誰かがいなかった。
原の手を取った人間はキングの貴嶋佑聖。彼が人を殺す快感に取りつかれた原を、ケルベロスとしてあちら側に引き込んだ。
鬱々とした思考に頭を支配されていた早河はリビングに顔を見せたなぎさの笑顔にホッとした。
「ご飯、上野さんも食べて行ってください。今日はお鍋なんです」
『ありがとう。いただくよ』
それは上野も同じだったようで、二人の男はなぎさの笑顔に救われていた。