蜜月と甘い嘘 〜忘れられた辣腕社長は記憶を無くした花嫁を離さない〜
「あの、笹原さん……」
「昴、だよ」
「え?」
「僕の名前。結婚しているのだから、何時までも『笹原さん』じゃないだろう?」
「あっと、じゃあ……す、昴、さん……?」
「ん?なんだい?」
おずおずと名前で呼びかけると、満面の笑みが返ってくる。
「あの、今更こんな事を聞くのも変ですけど……昴さんと私とのこと、色々教えて頂いてもいいですか?」
「ああ……そうだよね」
一瞬何か考え込むような表情をした彼が徐ろに口を開いたその時、画面から音量を間違えたかのような大きなジングルとナレーションがテレビから流れてきた。
『今週のインタビュー特集は話題の人、星刻堂社長の笹原昴さんです!』
「えっ?」
今口にしたばかりの名前に驚いて画面に目を向けると、そこに映し出されていたのはスーツ姿も麗しい男性。隣に座った「彼」その人が微笑んでいる。
「放送日、今日だったのか」
バツが悪そうな顔でリモコンの電源ボタンに手をかけようとする彼を、慌てて両手で引き止める。
画面の中では彼のプロフィールがテロップで説明されている。
笹原昴、三十二歳。株式会社星刻堂二代目社長――。一代で事業を軌道に載せた先代から星刻堂の事業を二十代の若さで譲り受け、その後斬新な商品開発で次々と世間を賑わせるヒット商品を連発させる。近年では巧みな企業の吸収合併による、高品質な商品の生産から供給までのルート作りに邁進する「今最も勢いがある高級スーパーマーケット」。そんな風に言わしめるまでにまで成長させた立役者である――。
「……笹原さん……、昴さんって星刻堂の社長なんですか?」
「ああ、うん。そうだね」
目を丸くする私に苦笑いすると「ちょっと待ってて」とリビングの外へと消えいく。そして数分後、戻ってきた彼の手には長方形の薄いケースが握られていた。
「改めてまして。久美の夫で、株式会社星刻堂代表取締役の笹原昴です」
ビジネスマン然として微笑む彼から手渡された名刺には確かに彼が名乗った通り、「社長」の文字がしっかりと表記されている。
「えっと、はい……よろしくお願いいたします……?」
彼が星刻堂の社長――?
テレビの画面では、引き続き「星刻堂社長」が快活にインタビューに答えている。けれど、それが目の前の彼だなんて。
自分の結婚相手の正体がまだ信じられない。
理解が追いつかない私は、ただ呆然とするしかないのだった。
「昴、だよ」
「え?」
「僕の名前。結婚しているのだから、何時までも『笹原さん』じゃないだろう?」
「あっと、じゃあ……す、昴、さん……?」
「ん?なんだい?」
おずおずと名前で呼びかけると、満面の笑みが返ってくる。
「あの、今更こんな事を聞くのも変ですけど……昴さんと私とのこと、色々教えて頂いてもいいですか?」
「ああ……そうだよね」
一瞬何か考え込むような表情をした彼が徐ろに口を開いたその時、画面から音量を間違えたかのような大きなジングルとナレーションがテレビから流れてきた。
『今週のインタビュー特集は話題の人、星刻堂社長の笹原昴さんです!』
「えっ?」
今口にしたばかりの名前に驚いて画面に目を向けると、そこに映し出されていたのはスーツ姿も麗しい男性。隣に座った「彼」その人が微笑んでいる。
「放送日、今日だったのか」
バツが悪そうな顔でリモコンの電源ボタンに手をかけようとする彼を、慌てて両手で引き止める。
画面の中では彼のプロフィールがテロップで説明されている。
笹原昴、三十二歳。株式会社星刻堂二代目社長――。一代で事業を軌道に載せた先代から星刻堂の事業を二十代の若さで譲り受け、その後斬新な商品開発で次々と世間を賑わせるヒット商品を連発させる。近年では巧みな企業の吸収合併による、高品質な商品の生産から供給までのルート作りに邁進する「今最も勢いがある高級スーパーマーケット」。そんな風に言わしめるまでにまで成長させた立役者である――。
「……笹原さん……、昴さんって星刻堂の社長なんですか?」
「ああ、うん。そうだね」
目を丸くする私に苦笑いすると「ちょっと待ってて」とリビングの外へと消えいく。そして数分後、戻ってきた彼の手には長方形の薄いケースが握られていた。
「改めてまして。久美の夫で、株式会社星刻堂代表取締役の笹原昴です」
ビジネスマン然として微笑む彼から手渡された名刺には確かに彼が名乗った通り、「社長」の文字がしっかりと表記されている。
「えっと、はい……よろしくお願いいたします……?」
彼が星刻堂の社長――?
テレビの画面では、引き続き「星刻堂社長」が快活にインタビューに答えている。けれど、それが目の前の彼だなんて。
自分の結婚相手の正体がまだ信じられない。
理解が追いつかない私は、ただ呆然とするしかないのだった。