蜜月と甘い嘘 〜忘れられた辣腕社長は記憶を無くした花嫁を離さない〜
◇◇◇
「それじゃあ、いってらっしゃい」
翌日月曜日。黒の艷やかな高級車から降車すると、助手席側の窓が開き、ハンドルを握っていた左手がこちらに伸びてくる。
「いつもありがとう。昴さんも運転気をつけて」
少し屈んでその手を握ると、またねと別れの挨拶をする。それがこのところの私達の朝のルーティンとなっていた。
以前は電車とバスでの通勤だったがあの日以降、彼は頑なに送ると言い張って譲らないからだっだ。
彼の会社と私の会社とでは電車で二駅程離れている。自分の為にわざわざ遠回りさせてしまうのは気が引けてしまう。
「会社から交通費も出ていることだし、送迎してもらわなくても大丈夫なんだけど……」
「でも、体もまだ本調子ではないでしょう?それに何より僕が久美と少しでも一緒にいたいんだよ。ね、いいでしょう?」
そんな殺し文句と微笑みを、断れる人などこの世にきっといないだろう。今朝もそんなやり取りの末、結局お言葉に甘えることにしたのだった。
「よーし!では私も頑張るかあ」
走り去る車を見送ると腕を上げて大きく伸びをすると、会社へ向かって歩き出す。
現在所属しているのはカフェ部門のエリア担当部署。新卒でタカラジマ珈琲へ入社後に店長経験を経て、半年前に配属されたばかりだ。
売上アップを目指すべく各店舗ごとに訪問しては指導・提案をしていくのが専らな役割だが、時には人手の足りない店舗にヘルプに入る事もあったりする。
今日は朝から課内ミーティングの後で、外回りに2店舗……。社有車で移動する距離も短い範囲で良かったと思いながらスケジュールを脳内で反芻していると、背後から声をかけられた。
「それじゃあ、いってらっしゃい」
翌日月曜日。黒の艷やかな高級車から降車すると、助手席側の窓が開き、ハンドルを握っていた左手がこちらに伸びてくる。
「いつもありがとう。昴さんも運転気をつけて」
少し屈んでその手を握ると、またねと別れの挨拶をする。それがこのところの私達の朝のルーティンとなっていた。
以前は電車とバスでの通勤だったがあの日以降、彼は頑なに送ると言い張って譲らないからだっだ。
彼の会社と私の会社とでは電車で二駅程離れている。自分の為にわざわざ遠回りさせてしまうのは気が引けてしまう。
「会社から交通費も出ていることだし、送迎してもらわなくても大丈夫なんだけど……」
「でも、体もまだ本調子ではないでしょう?それに何より僕が久美と少しでも一緒にいたいんだよ。ね、いいでしょう?」
そんな殺し文句と微笑みを、断れる人などこの世にきっといないだろう。今朝もそんなやり取りの末、結局お言葉に甘えることにしたのだった。
「よーし!では私も頑張るかあ」
走り去る車を見送ると腕を上げて大きく伸びをすると、会社へ向かって歩き出す。
現在所属しているのはカフェ部門のエリア担当部署。新卒でタカラジマ珈琲へ入社後に店長経験を経て、半年前に配属されたばかりだ。
売上アップを目指すべく各店舗ごとに訪問しては指導・提案をしていくのが専らな役割だが、時には人手の足りない店舗にヘルプに入る事もあったりする。
今日は朝から課内ミーティングの後で、外回りに2店舗……。社有車で移動する距離も短い範囲で良かったと思いながらスケジュールを脳内で反芻していると、背後から声をかけられた。