蜜月と甘い嘘 〜忘れられた辣腕社長は記憶を無くした花嫁を離さない〜
「知ってるも何も、私があんた達の恋のキューピッドになったようなもんじゃないのよ」
「あっ、えっと、そうだっけ?」
「忘れたとは言わせないわよー。あの日私が食事に誘ったからこそ、あんた達は出会ったんだから!」
「あぁ、あの、ナンパされた日……」

 あの日は彼女と一緒だったのか。一人納得しているとまたもや優子に「違うでしょ?」と反論される。

「ナンパじゃなくて、逆ナンでしょ?」
「え?」
「半年前のあの日、私達がたちの悪い酔っぱらいに絡まれて困ってたところに、星刻堂の社長さんが間に入って助けてくれたのよ。そしたら久美がメロメロになっちゃって『よかったらこれもなにかの縁なんで、連絡先教えてください!』って逆ナン始めちゃったのよ」
「……う、嘘」
「嘘じゃないわよー。もうね、傍から見てても「好き好き光線」が出まくってるのが丸わかりで、そりゃもう凄かったんだから」
「……そんなに凄かったの?」
「まあね。恋は人を変えるってはよく言うけど、いつも真面目な優等生の久美が、まさかあんな積極的な行動に出るなんて思わなかったからちょっとビックリはしたかな」

 当時を思い出したのか優子はやれやれと肩をすくめたが、直ぐにその表情を和らげた。

「でもさ。それがきっかけであっと言う間に結婚にまで至るんだから、人生って面白いものよね」

「私も婚活頑張ろうかな」と、笑いながら優子はスタスタと前を歩く。

 一方で私は混乱しながらも優子の話をもう一度、整理すべく頭の中で反芻していた。

 私は恋愛について決して奔放ではない筈だ。そんな私が初めて会った異性に声を掛けるなんて、一体どうしてしまってのだろう。なぜ、そんな大胆な行動を取ってしまったのだろう。

 ――彼がそれほどまでに魅力的だったから、なのだろうか。

 私は、自分らしくない過去の振る舞いに猛烈な恥ずかしさを覚えながら、ふと何か、胸に引っ掛かるような違和感を感じていた。

「あれ?だったら、あの話は……?」

 脳内に浮かんだのは、先日の昴さんの発言だった。


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