蜜月と甘い嘘 〜忘れられた辣腕社長は記憶を無くした花嫁を離さない〜
◇◇◇
仕事を終わらせ自宅へと戻ってきた私は、休む間もなく夕飯の支度をし始めた。
昴さんからはデリバリーという手もあるので無理はしなくて良いと言われてはいるものの、出来る限りは自炊を心掛けたい。朝に下準備しておいたポークソテー用の肉をフライパンで焼き始めてはみたものの、今日は中々料理に集中することが出来なかった。
――頭を過るのは朝の優子との会話だった。
「何かいい匂いがするね」
帰宅後直ぐに昴さんがネクタイを緩めながらキッチンへとやってきた。
いつもと変わらないご機嫌な様子だが、今はそれすら癇に障って仕方がない。
「――昴さんの嘘つき」
思いがけずに強い口調が飛び出した。
「えっ?……何が?」
突然の私の剣幕に驚きを隠せずにいる彼は、戸惑ったような顔を見せる。けれど朝から燻っていた感情は止めることができなかった。
「この間言ってた出会いのきっかけ、あれって昴さんからのナンパじゃなかったんでしょ?」
「……記憶、戻ったの?」
ハッとしたように強張る彼の表情と想定外の固い声色に、なぜだかこちらもドキリとする。
「……ううん。戻ってない、けど」
言い過ぎたのかもしれない……。
後悔し始めたその時に、再び彼がゆっくりと口を開いた。
「じゃあ、誰から聞いたの?」
「初めて昴さんに会った日に、一緒にいた優子から。……でもどうして自分からナンパしたなんて、嘘をついたの?」
彼のような素敵な男性が、ただの会社員である私に一目惚れだなんて、おかしいなとは思っていたのだ。
『軽いなって幻滅した?』
そんな彼の言葉が、正に今ブーメランとなって返ってくる。当時ガツガツとぶつかって行った自分を彼はどう思っていたのだろう。
恥知らずな軽薄な女だと思われていたのではないだろうか。
語尾に勢いがなくなって、遂にはシュンと項垂れていると頭上から思いもよらない言葉が降ってきた。
仕事を終わらせ自宅へと戻ってきた私は、休む間もなく夕飯の支度をし始めた。
昴さんからはデリバリーという手もあるので無理はしなくて良いと言われてはいるものの、出来る限りは自炊を心掛けたい。朝に下準備しておいたポークソテー用の肉をフライパンで焼き始めてはみたものの、今日は中々料理に集中することが出来なかった。
――頭を過るのは朝の優子との会話だった。
「何かいい匂いがするね」
帰宅後直ぐに昴さんがネクタイを緩めながらキッチンへとやってきた。
いつもと変わらないご機嫌な様子だが、今はそれすら癇に障って仕方がない。
「――昴さんの嘘つき」
思いがけずに強い口調が飛び出した。
「えっ?……何が?」
突然の私の剣幕に驚きを隠せずにいる彼は、戸惑ったような顔を見せる。けれど朝から燻っていた感情は止めることができなかった。
「この間言ってた出会いのきっかけ、あれって昴さんからのナンパじゃなかったんでしょ?」
「……記憶、戻ったの?」
ハッとしたように強張る彼の表情と想定外の固い声色に、なぜだかこちらもドキリとする。
「……ううん。戻ってない、けど」
言い過ぎたのかもしれない……。
後悔し始めたその時に、再び彼がゆっくりと口を開いた。
「じゃあ、誰から聞いたの?」
「初めて昴さんに会った日に、一緒にいた優子から。……でもどうして自分からナンパしたなんて、嘘をついたの?」
彼のような素敵な男性が、ただの会社員である私に一目惚れだなんて、おかしいなとは思っていたのだ。
『軽いなって幻滅した?』
そんな彼の言葉が、正に今ブーメランとなって返ってくる。当時ガツガツとぶつかって行った自分を彼はどう思っていたのだろう。
恥知らずな軽薄な女だと思われていたのではないだろうか。
語尾に勢いがなくなって、遂にはシュンと項垂れていると頭上から思いもよらない言葉が降ってきた。