早河シリーズ完結編【魔術師】
『思ったより元気そうだな。心配かけさせやがって』
『俺は不死身なんだよ』
見舞いの品を美月に渡して、渡辺亮と泉の夫妻はベッドを囲んで座った。
渡辺といつものように軽口を叩いていても、意識が戻ったばかりの隼人は面会も制限がかかっていて長居はできない。
「しばらく隼人のことお願いできるかな? 下のランドリーで洗濯してきたくて」
『いいよ。隼人は俺らで監視しておく』
『おい、監視ってなんだ』
『隼人はすーぐ煙草吸いに外に抜け出しそうだからな』
渡辺夫妻に送り出されて美月は洗濯物を詰めたボストンバッグを持って病室を出た。
息子が誘拐され、幼い娘の世話と隼人の看病、多忙を極める美月の精神と身体が泉は心配だった。
彼女は渡辺と隼人の顔を交互に見て椅子から腰を浮かせる。
「私も行ってくる。洗濯の手伝いもしたいし……」
『お前、方向音痴なんだから迷うなよ』
「子どもじゃないんだから迷いませんー」
からかう渡辺に口を尖らせて泉も病室を出ていく。隼人と二人だけになった病室で渡辺は肩を竦めた。
『泉もあれでも気を利かせたつもりなんだ。美月ちゃんのことも心配だし、自分がいると俺と隼人が話ができないと思ったんだろうな』
『悪いな。お前にも泉ちゃんにも迷惑かけて』
ベッドに寝ている隼人の顔はまだ青白い。意識は戻っても負傷した傷の回復はこれからだ。
『今さら迷惑ってことはねぇよ。ただちょっと、9年前にお前が里奈に刺されて意識不明だった時のこと思い出してた』
『あー……あの時か』
9年前にも隼人は元恋人の里奈に腹部を刺されて重傷を負った。あの時も寺沢莉央が応急手当てをしてくれて、一命を取り止めた。
今回も夢の中で莉央に生きろと諭された。また莉央に助けられたのだ。
『9年前もダメかと思ったけど、今回は本気でお前の葬式に出る覚悟決めてた。まぁ、よくしぶとく生きてたよな』
素直に言い表せない感情が素っ気ない言葉に溢れて流れる。どんなに素っ気なくても、30年近く人生を共にする幼なじみの想いは隼人に伝わっていた。
『俺は不死身なんだよ』
見舞いの品を美月に渡して、渡辺亮と泉の夫妻はベッドを囲んで座った。
渡辺といつものように軽口を叩いていても、意識が戻ったばかりの隼人は面会も制限がかかっていて長居はできない。
「しばらく隼人のことお願いできるかな? 下のランドリーで洗濯してきたくて」
『いいよ。隼人は俺らで監視しておく』
『おい、監視ってなんだ』
『隼人はすーぐ煙草吸いに外に抜け出しそうだからな』
渡辺夫妻に送り出されて美月は洗濯物を詰めたボストンバッグを持って病室を出た。
息子が誘拐され、幼い娘の世話と隼人の看病、多忙を極める美月の精神と身体が泉は心配だった。
彼女は渡辺と隼人の顔を交互に見て椅子から腰を浮かせる。
「私も行ってくる。洗濯の手伝いもしたいし……」
『お前、方向音痴なんだから迷うなよ』
「子どもじゃないんだから迷いませんー」
からかう渡辺に口を尖らせて泉も病室を出ていく。隼人と二人だけになった病室で渡辺は肩を竦めた。
『泉もあれでも気を利かせたつもりなんだ。美月ちゃんのことも心配だし、自分がいると俺と隼人が話ができないと思ったんだろうな』
『悪いな。お前にも泉ちゃんにも迷惑かけて』
ベッドに寝ている隼人の顔はまだ青白い。意識は戻っても負傷した傷の回復はこれからだ。
『今さら迷惑ってことはねぇよ。ただちょっと、9年前にお前が里奈に刺されて意識不明だった時のこと思い出してた』
『あー……あの時か』
9年前にも隼人は元恋人の里奈に腹部を刺されて重傷を負った。あの時も寺沢莉央が応急手当てをしてくれて、一命を取り止めた。
今回も夢の中で莉央に生きろと諭された。また莉央に助けられたのだ。
『9年前もダメかと思ったけど、今回は本気でお前の葬式に出る覚悟決めてた。まぁ、よくしぶとく生きてたよな』
素直に言い表せない感情が素っ気ない言葉に溢れて流れる。どんなに素っ気なくても、30年近く人生を共にする幼なじみの想いは隼人に伝わっていた。