早河シリーズ完結編【魔術師】
脚を洗い終えても美月はその場を動けなかった。どうすればいい、どうしたい、どうしよう、そんな思考の堂々巡りを続ける美月の左脚を軽く持ち上げて、佐藤は膝にキスをした。
突然のことに驚く美月は声も出せずに身を固くする。
目線を上げた佐藤と美月の視線が交差した。心に宿る甘い痛み。情欲の衝動。止まらない、止められない、甘い誘惑。
無言の佐藤は再び左膝に唇を落とす。シャワーで濡れた美月の肌を彼は舌でなぞった。
羞恥の火照りが全身を駆け巡り、佐藤の舌が触れた部分は熱を帯びている。
佐藤は美月の肌にキスをし続け、膝上までまくられたスカートの手前で、彼は何度も動きを止める。
右脚にも佐藤は同じ行為をした。美月の左脚も右脚も、洗って綺麗にした彼女の肌を舌でなぞって、彼は自分の痕跡を残していく。
もっと触れて欲しいのに佐藤はその先に進んでくれない。期待しては焦らされ、また期待する。
「私も怖いよ……」
足元にしゃがんで顔を伏せる佐藤の髪に触れた。指通りのいい白髪混じりの髪にそっと指を沿わせる。
「自分がどうかなっちゃうんじゃないかって怖い」
『俺も歯止めが効かなくなりそうで怖い』
佐藤の手が美月の膝の上から先に浸入を試みた。膝上でスカートを押さえていた美月の手はやんわりと退けられて、彼の手はスカートの内側に吸い込まれる。
「待って……」
『待てない。……嫌?』
嫌? と聞かれた直後に佐藤の指先がショーツの隙間に入り込んだ。
「ぁっ……」
直に触れられたソコから溢れてくるとろみには気付いていた。わかっている。それを期待していたって。
クチュクチュと漏れてくる水音は紛れもない欲情の合図。嫌でも耳に届くエクスタシーの音に美月の身体が熱くなった。爪先立った足がガクガク震えている。
「……ずるい」
『美月もずるい。嫌なら逃げろよ。抵抗してくれよ』
「私が抵抗できるわけないってわかってるくせに……」
とろけた蜜が溢れるソコは佐藤の指を咥えこんで離さない。ぬるぬるとぬめり気のある愛液が佐藤の二本の指をさらに奥へと誘った。
「あっ……、んんっ……」
甘く啼く美月の声を塞ぐのは佐藤の唇。下からは快楽の音が、上は唾液交じりのリップ音が、二種類の湿っぽい音が浴室に反響していた。
──バスルームの外に脱ぎ捨てられた二人分の服の残骸。熱気が籠《こも》って曇った硝子の壁に美月のしなやかな背中が押し付けられる。
何も身に付けていない身体同士を抱き合わせて、美月と佐藤はキスを続けた。頭上からぬるいシャワーが降り注ぎ、潮風になびいた二人の髪も、湿って濡れて雫が落ちた。
触れる手、熱い吐息、押し当てられた唇、男の色香を纏う低い声、全部恋しい。全部愛しい。
女は男が思うよりも綺麗じゃない。男も女が考えるよりも単純でもない。
綺麗なフリして単純なフリの騙し愛。
佐藤と繋がれた美月の左手には佐藤ではない男と誓った愛の印の結婚指輪。
悲しくて、切なくて、苦しくて、愛しくて、心が痛くて壊れそう。
この愛はどこまで越えたらいけないの?
どこからが、タブーなの?
ねぇ、誰か……教えて……
突然のことに驚く美月は声も出せずに身を固くする。
目線を上げた佐藤と美月の視線が交差した。心に宿る甘い痛み。情欲の衝動。止まらない、止められない、甘い誘惑。
無言の佐藤は再び左膝に唇を落とす。シャワーで濡れた美月の肌を彼は舌でなぞった。
羞恥の火照りが全身を駆け巡り、佐藤の舌が触れた部分は熱を帯びている。
佐藤は美月の肌にキスをし続け、膝上までまくられたスカートの手前で、彼は何度も動きを止める。
右脚にも佐藤は同じ行為をした。美月の左脚も右脚も、洗って綺麗にした彼女の肌を舌でなぞって、彼は自分の痕跡を残していく。
もっと触れて欲しいのに佐藤はその先に進んでくれない。期待しては焦らされ、また期待する。
「私も怖いよ……」
足元にしゃがんで顔を伏せる佐藤の髪に触れた。指通りのいい白髪混じりの髪にそっと指を沿わせる。
「自分がどうかなっちゃうんじゃないかって怖い」
『俺も歯止めが効かなくなりそうで怖い』
佐藤の手が美月の膝の上から先に浸入を試みた。膝上でスカートを押さえていた美月の手はやんわりと退けられて、彼の手はスカートの内側に吸い込まれる。
「待って……」
『待てない。……嫌?』
嫌? と聞かれた直後に佐藤の指先がショーツの隙間に入り込んだ。
「ぁっ……」
直に触れられたソコから溢れてくるとろみには気付いていた。わかっている。それを期待していたって。
クチュクチュと漏れてくる水音は紛れもない欲情の合図。嫌でも耳に届くエクスタシーの音に美月の身体が熱くなった。爪先立った足がガクガク震えている。
「……ずるい」
『美月もずるい。嫌なら逃げろよ。抵抗してくれよ』
「私が抵抗できるわけないってわかってるくせに……」
とろけた蜜が溢れるソコは佐藤の指を咥えこんで離さない。ぬるぬるとぬめり気のある愛液が佐藤の二本の指をさらに奥へと誘った。
「あっ……、んんっ……」
甘く啼く美月の声を塞ぐのは佐藤の唇。下からは快楽の音が、上は唾液交じりのリップ音が、二種類の湿っぽい音が浴室に反響していた。
──バスルームの外に脱ぎ捨てられた二人分の服の残骸。熱気が籠《こも》って曇った硝子の壁に美月のしなやかな背中が押し付けられる。
何も身に付けていない身体同士を抱き合わせて、美月と佐藤はキスを続けた。頭上からぬるいシャワーが降り注ぎ、潮風になびいた二人の髪も、湿って濡れて雫が落ちた。
触れる手、熱い吐息、押し当てられた唇、男の色香を纏う低い声、全部恋しい。全部愛しい。
女は男が思うよりも綺麗じゃない。男も女が考えるよりも単純でもない。
綺麗なフリして単純なフリの騙し愛。
佐藤と繋がれた美月の左手には佐藤ではない男と誓った愛の印の結婚指輪。
悲しくて、切なくて、苦しくて、愛しくて、心が痛くて壊れそう。
この愛はどこまで越えたらいけないの?
どこからが、タブーなの?
ねぇ、誰か……教えて……