早河シリーズ完結編【魔術師】
{仮に香奈がパパ活していたとしても、絢の自殺とは無関係だから余計な情報だとは思ったけど、一応の報告}
「ありがとう。そうね、事件と関わりがないのなら私達はどうすることもできない。ただ……楽してお金が手に入ることを覚えた子どもが誰からも正しく矯正されずに大人になる、それが一番怖いわね」

 教育委員会幹部の実父もパパ活のパパも、香奈が誤った道に進んでもおそらく何も言わない。香奈を本気で叱り、諭してくれる大人が彼女の周りにはいないのだろう。

「身体を売らないからいいと思ってやってる子も多いのよ。そうじゃないのにね。身体を売っていなくても失っていくものが確実にある」
{いつの時代も女は男の餌食にされてるよな。俺からすれば、高校生や大学生相手にして飯を奢ってブランド品買ってやる媚びたおっさんもどうかしてるよ}

 家では年頃の娘に嫌われて妻や娘に相手にされない父親が、良いパパを演じたいと願う欲望でパパ活のパパを始めた男がいた。

その男はパパ活相手の16歳の少女に性行為を強要して拒否されたことから少女を殺してしまい、真紀に逮捕された。

パパ活をする男の動機も様々だろうが、殺人で逮捕した男が供述で語っていた内容が印象的だった。


 ──“実の娘に相手にされない不満から娘と同じ年頃の女の子とデートをして小遣いを渡して、優しくていいパパの願望を満たしたかった。でもそのうち食事だけじゃ物足りなくなって、女の子の身体が欲しくなってしまった”──


 男側は欲望と願望を満たし、少女側はデートを数時間するだけで何万円もの金額が手に入る。
いつの時代も、名称や内容は変わっても残り続ける男女の搾取の連鎖。

「男は若い女が好きだからねぇ」
{そうか? 若ければいいってものでもないし、俺はいつでも真紀だけが好きだぞ。アイラブ真紀ちゃんっ!}
「はいはい、ありがとーございまーす」

 結婚8年目を迎えても矢野の口説き文句は出会った頃から変わらない。真紀は笑って返して通話を切った。

 進路指導室に戻ると、芳賀が歩美と瑞樹に自殺する前の絢の言動で気になったことはないか尋ねていた。

香奈はまたスマホを眺めている。
真紀の言葉は歩美と瑞樹には届いても香奈には届かなかった。香奈が心から自分の過ちに気付ける日が来るかは、彼女の今後次第。

 SNSでどれだけ日常をキラキラと派手に彩っても、今ここにいる16歳の少女は無愛想に口を尖らせた、つまらなさそうな顔をしていた。
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