早河シリーズ完結編【魔術師】

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 桃プリのリアルコモモ降臨!
 リアルコモモちゃんとリアルショウくん夫妻尊い
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 →まおまお
 えー!リアルコモモちゃんとリアルショウくん夫妻がいるの?
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桃色学園プリンセスのファン仲間の〈まおまお〉から即リプライが届いた。菜々子はまおまおに返信する。


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 →なっぱ
 そうなの!職場の上司夫妻の奥さんがリアルコモモちゃんで上司がリアルショウくん!
 奥さん実物かわいくて昇天しそうになった
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 まおまおへの返信をしてスマホの電源を切った菜々子は映画館の座席についた。これから観る映画はまさに桃色学園プリンセスの劇場版だ。

 映画を観る前のわくわくした高揚感の裏側で内気な自分が顔を覗かせる。暗がりの館内で彼女は溜息をついた。

美月も桃色学園プリンセスのコモモも、綺麗で可愛い。おまけに格好いいお似合いの恋人がいる。
彼女達はすべてを手に入れている。

 母親となっても綺麗にメイクをして、素敵なパートナーと可愛い子ども達と幸せな生活をしている彼女達をまざまざと目にするたびに、菜々子の心は死んでいく。

(私は一生あんな風にはなれない。あれは選ばれた人だけが手に入れられる幸せ。まず顔の造りから違うのにブスな私がメイクしたって可愛くならないし……)

 休日にノーメイクで、ひとりでショッピングモールに出掛けて、ひとりで映画を観る人生が可哀想だとは思わない。ひとりで観る映画ほど気楽なものはなく、これはこれで自分らしく楽しんでいる。

リアルな友達の数よりもネットの友達の数の方が多くてもその方が楽だから気にしない。リアルの人は怖いけれどネットの人は皆優しい。

 それでも、たまに思ってしまう。容姿が美人だったら、スタイルが良かったら、彼氏がいれば、社交的な性格だったら、アニメの話ができるリアルな友達がいれば……でもどれも自分には高望みだ。

モブキャラは、一生モブキャラで主人公にはなれない。ずっと死ぬまでモブキャラだ。

 スクリーンに〈劇場版 桃色学園プリンセス〉とタイトルが映し出されて映画が始まった。アニメを観ていても菜々子は主人公ではなく、主人公を取り巻くモブキャラの心情になりきって作品の世界に浸る。

桃色学園プリンセスの主人公のコモモは今日も菜々子に現実逃避の夢を見せるべく、きらきらと輝く笑顔を銀幕で披露していた。
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