早河シリーズ完結編【魔術師】
木村一家は豊洲のショッピングモールから文京区の住宅街に向かった。何度も訪れているマンションの呼び鈴を隼人に抱き抱えられた斗真が押す。
『ぴんぽーんっ!』
斗真の声と共に呼び鈴が鳴り、扉から女性が顔を覗かせた。
「いらっしゃーい!」
出迎えた渡辺泉はまず斗真の頭を撫で、美月の腕の中にいる美夢の頭も撫でた。斗真も美夢も、泉によくなついている。
隼人と美月は泉に招かれて渡辺家に入った。ここは隼人の幼なじみの渡辺亮と妻の泉の自宅だ。
『よっ。新婚』
『おう』
隼人が照れ臭そうに笑う渡辺亮と挨拶のハイタッチを交わす。部屋にはもうひとり、来客が待っていた。
『ヒロにぃちゃーん』
『斗真、また背が大きくなったなぁ』
渡辺の従弟の松田宏文が駆け寄ってきた斗真を膝の上に乗せた。隼人は松田の隣に腰を降ろす。
『ヒロと会うのは久しぶりだな』
『3ヶ月ニューヨーク出張だったからね。これ、ニューヨーク土産。こっちは斗真と美夢に』
松田は二つの黒色の袋を隼人に、金色の袋を斗真に渡した。美夢への土産は美月に手渡す。
「先輩、いつも子ども達にまでお土産を買ってきてくれてありがとうございます」
『いえいえ。斗真と美夢が喜ぶ顔想像すると、つい買ってきちゃうんだよ』
松田と美月は大学の先輩後輩の間柄。大学時代に松田が美月に恋心を抱いていたことは、当時を知らない泉以外の者達には周知の事実だ。
木村一家の到着の数分後に隼人と渡辺の幼なじみの麻衣子が揃い、本日のパーティーが開催となった。
『では、皆揃ったところで。亮、泉ちゃん、結婚おめでとう』
隼人の合図で美月、麻衣子、松田と斗真も一斉におめでとうと口ずさむ。1歳になったばかりの美夢だけは、大人達の事情も素知らぬ顔でオモチャで楽しく遊んでいた。
渡辺と泉は頬を染めて来賓に笑顔で応える。渡辺夫妻は立ち上がって一礼した。
『えーっと……皆には色々とご心配をおかけしましたが……』
『本当にな。同棲解消騒動になった時はどうなることかと思った』
尊大な態度でソファーに座る隼人が渡辺の言葉を遮る。渡辺がバツの悪そうな顔で隼人をねめつけ、隼人は口元を斜めにして笑っていた。
美月はこの光景に既視感があった。記憶を辿ると6年前の美月と隼人が結婚した時、渡辺達が集まったパーティーでは隼人と渡辺の立場が今と逆転していた。
(この幼なじみ二人は本当に仲良しだなぁ)
本当に仲が良いからこそ、軽口も嫌味なく叩けるものだ。仕切り直して渡辺が咳払いした。
『ぴんぽーんっ!』
斗真の声と共に呼び鈴が鳴り、扉から女性が顔を覗かせた。
「いらっしゃーい!」
出迎えた渡辺泉はまず斗真の頭を撫で、美月の腕の中にいる美夢の頭も撫でた。斗真も美夢も、泉によくなついている。
隼人と美月は泉に招かれて渡辺家に入った。ここは隼人の幼なじみの渡辺亮と妻の泉の自宅だ。
『よっ。新婚』
『おう』
隼人が照れ臭そうに笑う渡辺亮と挨拶のハイタッチを交わす。部屋にはもうひとり、来客が待っていた。
『ヒロにぃちゃーん』
『斗真、また背が大きくなったなぁ』
渡辺の従弟の松田宏文が駆け寄ってきた斗真を膝の上に乗せた。隼人は松田の隣に腰を降ろす。
『ヒロと会うのは久しぶりだな』
『3ヶ月ニューヨーク出張だったからね。これ、ニューヨーク土産。こっちは斗真と美夢に』
松田は二つの黒色の袋を隼人に、金色の袋を斗真に渡した。美夢への土産は美月に手渡す。
「先輩、いつも子ども達にまでお土産を買ってきてくれてありがとうございます」
『いえいえ。斗真と美夢が喜ぶ顔想像すると、つい買ってきちゃうんだよ』
松田と美月は大学の先輩後輩の間柄。大学時代に松田が美月に恋心を抱いていたことは、当時を知らない泉以外の者達には周知の事実だ。
木村一家の到着の数分後に隼人と渡辺の幼なじみの麻衣子が揃い、本日のパーティーが開催となった。
『では、皆揃ったところで。亮、泉ちゃん、結婚おめでとう』
隼人の合図で美月、麻衣子、松田と斗真も一斉におめでとうと口ずさむ。1歳になったばかりの美夢だけは、大人達の事情も素知らぬ顔でオモチャで楽しく遊んでいた。
渡辺と泉は頬を染めて来賓に笑顔で応える。渡辺夫妻は立ち上がって一礼した。
『えーっと……皆には色々とご心配をおかけしましたが……』
『本当にな。同棲解消騒動になった時はどうなることかと思った』
尊大な態度でソファーに座る隼人が渡辺の言葉を遮る。渡辺がバツの悪そうな顔で隼人をねめつけ、隼人は口元を斜めにして笑っていた。
美月はこの光景に既視感があった。記憶を辿ると6年前の美月と隼人が結婚した時、渡辺達が集まったパーティーでは隼人と渡辺の立場が今と逆転していた。
(この幼なじみ二人は本当に仲良しだなぁ)
本当に仲が良いからこそ、軽口も嫌味なく叩けるものだ。仕切り直して渡辺が咳払いした。