早河シリーズ完結編【魔術師】
どうして彼女達は人目も気にせずに道端で長時間も話ができるのか。しかも話している内容は、それほど身のある話だとも思えない。
どこどこの家の子どもがどこの学校を受験して落ちた、どこの家の旦那が不倫していた、あそこの家が犬を飼い始めた、そんな話題ばかり。
誰かに聞かれてはまずい話は、そもそも井戸端会議では話さないルールでもあるのだろうか。
しかし二人目が生まれてすぐに、無遠慮に三人目の話を持ち出すのは勘弁して欲しい。
トイレ掃除もゴミ出しも終わった。あとは洗濯物を干すだけだ。二階のベランダに並ぶ洗いたての衣類。
今日は天気が良く、カラッとした11月の空が気持ちいい。
白地にピンクのいちごの絵が散りばめられた真愛のパンツを洗濯ハンガーに吊るす。
大人の真似をして一人前にリップを塗っていても、履いているパンツがいちご柄では真愛はまだまだ子どもだ。いちごのパンツの子どもっぽさに何故か安堵している。
これで朝の仕事は終えた。もう午前9時になる。
家事をしていると時間があっという間に過ぎてしまう。なるほど、これが主婦の感覚なのだ。
なぎさが出産前にアイロンをかけておいてくれたワイシャツを着て、ネクタイを締め、ジャケットを羽織る。慣れた仕草で腕時計を嵌めてスマートフォンをポケットに押し込み、中野区の自宅を出た。
現在も探偵業を営む早河の拠点は新宿区四谷の探偵事務所。早河は中野の自宅と四谷の事務所を行き来する生活を送っている。
四谷の探偵事務所で午前中の仕事を片付け、正午を過ぎた頃に彼は再び中野区方面に車を走らせた。
中野区の産婦人科の駐車場に着いた早河は、車を降りる前にジャケットの袖口の匂いを嗅いだ。気をつけてはいるが、産婦人科で煙草の匂いはさせられない。
匂いチェックを済ませて病院の中へ。清潔感のあるクリーム色の床と壁が彼を出迎えた。
待合室では女性が数人座っていた。腹部の大きさが目立つ女性もいれば、そうではない人もいる。訳ありの事情がありそうな高校生くらいの年頃の少女の側には、母親らしき女性が付き添っていた。
産婦人科を訪れる目的は出産のためだけではない。あらゆる事情を抱えた人がここに集う。産婦人科には幸せも、涙もある。
男子禁制の気配が漂う院内の廊下を足早に歩いて、階段で三階に向かった。面会時間は13時からと決まっている。
三階の廊下は面会に訪れる人々が行き交っていた。
どこどこの家の子どもがどこの学校を受験して落ちた、どこの家の旦那が不倫していた、あそこの家が犬を飼い始めた、そんな話題ばかり。
誰かに聞かれてはまずい話は、そもそも井戸端会議では話さないルールでもあるのだろうか。
しかし二人目が生まれてすぐに、無遠慮に三人目の話を持ち出すのは勘弁して欲しい。
トイレ掃除もゴミ出しも終わった。あとは洗濯物を干すだけだ。二階のベランダに並ぶ洗いたての衣類。
今日は天気が良く、カラッとした11月の空が気持ちいい。
白地にピンクのいちごの絵が散りばめられた真愛のパンツを洗濯ハンガーに吊るす。
大人の真似をして一人前にリップを塗っていても、履いているパンツがいちご柄では真愛はまだまだ子どもだ。いちごのパンツの子どもっぽさに何故か安堵している。
これで朝の仕事は終えた。もう午前9時になる。
家事をしていると時間があっという間に過ぎてしまう。なるほど、これが主婦の感覚なのだ。
なぎさが出産前にアイロンをかけておいてくれたワイシャツを着て、ネクタイを締め、ジャケットを羽織る。慣れた仕草で腕時計を嵌めてスマートフォンをポケットに押し込み、中野区の自宅を出た。
現在も探偵業を営む早河の拠点は新宿区四谷の探偵事務所。早河は中野の自宅と四谷の事務所を行き来する生活を送っている。
四谷の探偵事務所で午前中の仕事を片付け、正午を過ぎた頃に彼は再び中野区方面に車を走らせた。
中野区の産婦人科の駐車場に着いた早河は、車を降りる前にジャケットの袖口の匂いを嗅いだ。気をつけてはいるが、産婦人科で煙草の匂いはさせられない。
匂いチェックを済ませて病院の中へ。清潔感のあるクリーム色の床と壁が彼を出迎えた。
待合室では女性が数人座っていた。腹部の大きさが目立つ女性もいれば、そうではない人もいる。訳ありの事情がありそうな高校生くらいの年頃の少女の側には、母親らしき女性が付き添っていた。
産婦人科を訪れる目的は出産のためだけではない。あらゆる事情を抱えた人がここに集う。産婦人科には幸せも、涙もある。
男子禁制の気配が漂う院内の廊下を足早に歩いて、階段で三階に向かった。面会時間は13時からと決まっている。
三階の廊下は面会に訪れる人々が行き交っていた。