早河シリーズ完結編【魔術師】
叔父は世間を騒がせた殺人犯、母親も殺されている。有紗の負った心の傷は誰にでも理解できるものではない。
加納伊織はそんな特殊な事情を持つ有紗を受け入れ、支え続けてくれている。有紗がいい人に出会えてよかったと心から思う。
有紗が食後のコーヒーを淹れてくれた。コーヒーの入るマグカップのひとつを早河に渡して、有紗は早河の隣に腰を降ろす。
『真愛がさ、パパ大好きって言ってくれるんだけど……』
「パパ大嫌いーっ! って言われるよりはいいじゃない」
真愛と歩の寝顔がすぐそこにある。二人を起こさないように、早河達の話し声も控えめだ。
『うん、まぁな……。でもパパ大好きって言われるたびに真愛の父親が俺でよかったのかと考えるんだ。俺の娘に生まれたばかりに、真愛には辛い思いをさせてしまった』
静かにコーヒーを飲む早河の横顔を有紗は見つめた。
昔は何かあっても早河が有紗に弱音を漏らすことはなかった。それは有紗がまだ十代の子どもだったから。
早河との出会いから今年の冬で10年。彼が心の内を語ってくれるのは有紗を対等に、大人として扱っている証だ。
「自分のせいで真愛ちゃんが苦しんでるって思ってる?」
『事件に真愛を巻き込んでしまったのは事実だ。俺の娘に生まれて真愛は幸せなのかって……』
「早河さんは私のヒーローなんだよ」
有紗は早河の腕を両手で掴んだ。こうして捕まえていないとふっと消えてしまいそうで、どこかに居なくなってしまいそうで、早河は時折そんな危うさを垣間見せる。
なぎさと真愛の存在が早河をこの世に繋ぎ止めている。だからどこにも行ってはダメだよ。あなたのこの手は、大切な人を守るためにあるのだから。
「私がもし早河さんの子どもだったらね、私のパパは強くて優しくて格好いい最強の探偵なんだよって自慢しまくるよ。早河さんの娘に生まれて幸せに決まってるよっ!」
有紗の真剣な眼差しが揺らいで滲んで、目から涙が零れ落ちそうだ。
「早河さんが自分を責めるのはわかるけど、真愛ちゃんが早河さんの娘に生まれたから苦しんでるなんて思ってたら真愛ちゃんが可哀想だよ」
気遣う側から気遣われる側にいつの間にか立場が逆転していた。有紗の想いに心があたたまる。
加納伊織はそんな特殊な事情を持つ有紗を受け入れ、支え続けてくれている。有紗がいい人に出会えてよかったと心から思う。
有紗が食後のコーヒーを淹れてくれた。コーヒーの入るマグカップのひとつを早河に渡して、有紗は早河の隣に腰を降ろす。
『真愛がさ、パパ大好きって言ってくれるんだけど……』
「パパ大嫌いーっ! って言われるよりはいいじゃない」
真愛と歩の寝顔がすぐそこにある。二人を起こさないように、早河達の話し声も控えめだ。
『うん、まぁな……。でもパパ大好きって言われるたびに真愛の父親が俺でよかったのかと考えるんだ。俺の娘に生まれたばかりに、真愛には辛い思いをさせてしまった』
静かにコーヒーを飲む早河の横顔を有紗は見つめた。
昔は何かあっても早河が有紗に弱音を漏らすことはなかった。それは有紗がまだ十代の子どもだったから。
早河との出会いから今年の冬で10年。彼が心の内を語ってくれるのは有紗を対等に、大人として扱っている証だ。
「自分のせいで真愛ちゃんが苦しんでるって思ってる?」
『事件に真愛を巻き込んでしまったのは事実だ。俺の娘に生まれて真愛は幸せなのかって……』
「早河さんは私のヒーローなんだよ」
有紗は早河の腕を両手で掴んだ。こうして捕まえていないとふっと消えてしまいそうで、どこかに居なくなってしまいそうで、早河は時折そんな危うさを垣間見せる。
なぎさと真愛の存在が早河をこの世に繋ぎ止めている。だからどこにも行ってはダメだよ。あなたのこの手は、大切な人を守るためにあるのだから。
「私がもし早河さんの子どもだったらね、私のパパは強くて優しくて格好いい最強の探偵なんだよって自慢しまくるよ。早河さんの娘に生まれて幸せに決まってるよっ!」
有紗の真剣な眼差しが揺らいで滲んで、目から涙が零れ落ちそうだ。
「早河さんが自分を責めるのはわかるけど、真愛ちゃんが早河さんの娘に生まれたから苦しんでるなんて思ってたら真愛ちゃんが可哀想だよ」
気遣う側から気遣われる側にいつの間にか立場が逆転していた。有紗の想いに心があたたまる。