早河シリーズ完結編【魔術師】
泣きそうな顔をしていた有紗が早河の頬にキスをした。
「元気になるおまじないですぅー」
硬直した早河に向けて舌をペロッと出して微笑する有紗は、イタズラが成功した時の子どものよう。有紗の成長を感慨深く感じていた矢先にコレだ。
『何が元気になるおまじないだよ……』
有紗の唇が触れた頬に手を当ててぼやく。頬にキスくらいで動揺はしないが、彼女が十代の頃とは違う。
有紗も27歳の大人、旦那も子どももいる彼女からの突然の攻撃に、動揺はなくとも多少の衝撃はあった。
真愛と有紗、本日二回目の頬にキスだ。
有紗のしてやったりな顔にお返しのデコピンを食らわせた。額をさする有紗の笑顔は高校生の頃と変わらない。
「ちょっとは嬉しかった?」
『全然』
「ひどぉーい。伊織となぎささんがいるから口は我慢でほっぺにチューにしたんだよっ」
『ああ、そうですか。どーもありがとうございましたー』
棒読みセリフを述べる早河は有紗に背を向けてしまう。大人の女性になった有紗に迫られるのは妙に照れ臭く、どうすればいいかわからない。
「もう。キスした仲なのに素直じゃないなぁ」
『あれは忘れろ。10年も前だぞ』
「ずっと覚えてるもーん。早河さんがキス巧いことも知ってるもーん」
10年前に早河と有紗はキスをしている。ほっぺにチューなんて生易しいキスではないものを。
なぎさには何故か知られているが、有紗の夫には一生秘密にしなければいけない。
「でも元気になったでしょ?」
有紗は早河の背中に指で絵文字を描いていた。くすぐったい背中越しに感じる有紗の思いやり。
確かに気落ちしていた気分は晴れている。悔しいが、頬にキスへの衝撃は凄まじかった。
早河と有紗の関係は恋愛の色欲を抜きにした、互いを思いやる優しさで溢れている。
いくつになっても有紗は早河を困らせる野良猫だ。でも有紗のこんな可愛いイタズラも、彼女が夫に一途なことをわかっているから受け流せる。
『……ありがとな』
「お安いご用さ」
言葉少なげでも気持ちが通じ合う年齢も性別も越えた友人の自宅を辞し、まだ半分眠りこけている真愛を車に乗せて早河は帰路についた。
「元気になるおまじないですぅー」
硬直した早河に向けて舌をペロッと出して微笑する有紗は、イタズラが成功した時の子どものよう。有紗の成長を感慨深く感じていた矢先にコレだ。
『何が元気になるおまじないだよ……』
有紗の唇が触れた頬に手を当ててぼやく。頬にキスくらいで動揺はしないが、彼女が十代の頃とは違う。
有紗も27歳の大人、旦那も子どももいる彼女からの突然の攻撃に、動揺はなくとも多少の衝撃はあった。
真愛と有紗、本日二回目の頬にキスだ。
有紗のしてやったりな顔にお返しのデコピンを食らわせた。額をさする有紗の笑顔は高校生の頃と変わらない。
「ちょっとは嬉しかった?」
『全然』
「ひどぉーい。伊織となぎささんがいるから口は我慢でほっぺにチューにしたんだよっ」
『ああ、そうですか。どーもありがとうございましたー』
棒読みセリフを述べる早河は有紗に背を向けてしまう。大人の女性になった有紗に迫られるのは妙に照れ臭く、どうすればいいかわからない。
「もう。キスした仲なのに素直じゃないなぁ」
『あれは忘れろ。10年も前だぞ』
「ずっと覚えてるもーん。早河さんがキス巧いことも知ってるもーん」
10年前に早河と有紗はキスをしている。ほっぺにチューなんて生易しいキスではないものを。
なぎさには何故か知られているが、有紗の夫には一生秘密にしなければいけない。
「でも元気になったでしょ?」
有紗は早河の背中に指で絵文字を描いていた。くすぐったい背中越しに感じる有紗の思いやり。
確かに気落ちしていた気分は晴れている。悔しいが、頬にキスへの衝撃は凄まじかった。
早河と有紗の関係は恋愛の色欲を抜きにした、互いを思いやる優しさで溢れている。
いくつになっても有紗は早河を困らせる野良猫だ。でも有紗のこんな可愛いイタズラも、彼女が夫に一途なことをわかっているから受け流せる。
『……ありがとな』
「お安いご用さ」
言葉少なげでも気持ちが通じ合う年齢も性別も越えた友人の自宅を辞し、まだ半分眠りこけている真愛を車に乗せて早河は帰路についた。