早河シリーズ完結編【魔術師】
早河は真愛と5年生の少女を連れて、黄色いテープの内側の事件現場に足を踏み入れた。
真愛と5年生の少女はうさぎ小屋の前で手を合わせて黙祷する。真愛より年上の5年生の少女は涙ぐんでいたが、2年生の真愛は泣かなかった。
真愛は泣かないのではなく泣けないのだ。極限の悲しみの時に人は涙も出なくなる。
庭の隅の簡易小屋に移されたうさぎの数は五匹。殺されたうさぎも五匹。数が半分に減ってしまった。
5年生の少女が給水器のボトルを取り外して水を替えに行く。簡易小屋の金網に真愛が顔を近付けると、二匹のうさぎが網越しに近寄ってきた。
「パパ、犯人わかった?」
『うーん。まだかな。うさぎに話が聞ければいいんだけどね』
早河は曖昧に誤魔化した。まだ“あの人”が犯人だと糾弾できる決定的な確証がない。
「うさぎさんとお話すれば、この子達は教えてくれるよ。動物さんは嘘をつかないもん」
真愛にならばうさぎは真相を教えてくれるだろう。心が濁った大人には聞き取れない動物の声を聞き取れる力が、子どもには備わっている。
背後が騒々しくなった。ニワトリが羽をばたつかせる音と甲高い鳴き声が聞こえて、早河と真愛は振り返った。
佐竹明美が餌袋を抱えて立っている。彼女の横にはランドセルを背負った背の高い男の子と、その男の子よりは年下に見える女の子がいた。
「警察の方がもう入っていいと仰ったので、ニワトリの餌やりに……」
明美の声もニワトリの鳴き声に遮られて聞き取り辛い。彼女は二人の生徒をニワトリ小屋に入らせた。
真愛の話では生き物係は2年生と5年生のペアがうさぎを、3年生と6年生のペアがニワトリを担当するようだ。
1年生と4年生のペアは、学校で育てている野菜の収穫や花壇の水やりをするらしい。
「ニワトリさん達どうしたのかな。いつもはこんなに鳴いたりしないのに。……あれ? みんなどうしたの? おーい」
それまで真愛に顔を近付けたりして気ままに過ごしていた五匹のうさぎ達が、小屋の隅に移動して皆で固まっていた。
騒ぐニワトリと隅で縮こまるうさぎを見て真愛が不思議がっている。
早河にはうさぎが怯えているように見えた。
真愛と5年生の少女はうさぎ小屋の前で手を合わせて黙祷する。真愛より年上の5年生の少女は涙ぐんでいたが、2年生の真愛は泣かなかった。
真愛は泣かないのではなく泣けないのだ。極限の悲しみの時に人は涙も出なくなる。
庭の隅の簡易小屋に移されたうさぎの数は五匹。殺されたうさぎも五匹。数が半分に減ってしまった。
5年生の少女が給水器のボトルを取り外して水を替えに行く。簡易小屋の金網に真愛が顔を近付けると、二匹のうさぎが網越しに近寄ってきた。
「パパ、犯人わかった?」
『うーん。まだかな。うさぎに話が聞ければいいんだけどね』
早河は曖昧に誤魔化した。まだ“あの人”が犯人だと糾弾できる決定的な確証がない。
「うさぎさんとお話すれば、この子達は教えてくれるよ。動物さんは嘘をつかないもん」
真愛にならばうさぎは真相を教えてくれるだろう。心が濁った大人には聞き取れない動物の声を聞き取れる力が、子どもには備わっている。
背後が騒々しくなった。ニワトリが羽をばたつかせる音と甲高い鳴き声が聞こえて、早河と真愛は振り返った。
佐竹明美が餌袋を抱えて立っている。彼女の横にはランドセルを背負った背の高い男の子と、その男の子よりは年下に見える女の子がいた。
「警察の方がもう入っていいと仰ったので、ニワトリの餌やりに……」
明美の声もニワトリの鳴き声に遮られて聞き取り辛い。彼女は二人の生徒をニワトリ小屋に入らせた。
真愛の話では生き物係は2年生と5年生のペアがうさぎを、3年生と6年生のペアがニワトリを担当するようだ。
1年生と4年生のペアは、学校で育てている野菜の収穫や花壇の水やりをするらしい。
「ニワトリさん達どうしたのかな。いつもはこんなに鳴いたりしないのに。……あれ? みんなどうしたの? おーい」
それまで真愛に顔を近付けたりして気ままに過ごしていた五匹のうさぎ達が、小屋の隅に移動して皆で固まっていた。
騒ぐニワトリと隅で縮こまるうさぎを見て真愛が不思議がっている。
早河にはうさぎが怯えているように見えた。