早河シリーズ完結編【魔術師】
結局、香道家を出発した時には正午が近かった。昼時で賑わうファミレスで真愛はミートソースのパスタを掻き込んでいる。
「真愛ね、お洋服とお靴が欲しい」
『わかった。真愛の行きたい所も行くけど、先にパパの行きたい所に行っていい?』
「いいよぉ!」
ミートソースで口の周りを赤くした真愛はご機嫌に微笑んだ。せっかくの色つきリップクリームが取れてしまった真愛の口周りをテーブルナプキンで拭いてやりながら、話を切り出すタイミングを考えていた。
ランチの後の行き先は東京郊外の霊園。ここに早河の両親が眠っている。
「パパの行きたい所って、おじいちゃんとおばあちゃんの所だったんだねっ!」
霊園に続く石段を真愛はぴょんぴょん跳ねて上がっていく。夏の盆でも春と秋の彼岸でもない、命日でもない、なんでもない日に急に両親の墓参りがしたくなった。
早河家の墓石に花を手向ける。早河は3歳の時に母親を、高校生で父親を亡くした。
妻のなぎさも娘の真愛も、早河の両親には会ったことがない。
「うさぎさん、天国に行けたかな。切られたお腹……治ったかな……。もう痛くないかな……?」
手を合わせていた真愛は冬の空を見上げた。
「天国には、おじいちゃんとおばあちゃんと、アキおじちゃんとリオちゃんがいるから、みんながうさぎさんを可愛がってくれるよね」
空の彼方の存在するかもわからない天国に想いを馳せる。
天国には早河の両親、なぎさの兄の香道秋彦、なぎさの親友の寺沢莉央がいると真愛は信じていた。
『きっとみんながうさぎさんを可愛がってくれるよ。天国にいるのは、優しい人達ばかりだから』
早河も信じていた。無惨に命を奪われた五匹のうさぎは、天国にいる彼らが真愛の分まで可愛がってくれるだろう。
彼らにとって真愛は孫で、姪で、親友の娘。
どうか、空の上から真愛を見守っていてください……早河は天に祈りを捧げた。
霊園を離れた早河と真愛が行き着いた場所は世田谷区の二子玉川ライズショッピングセンター。
両側を二子玉川ライズのビルに囲まれた広場には大きなクリスマスツリーが飾られていて、ショッピングモールの至るところでクリスマスモチーフの装飾を見かけた。
買い物を済ませて二子玉川ライズの店舗を出る頃には、空は夕暮れ色に染まっていた。真愛は新しい服と靴、ぬいぐるみを買ってもらって機嫌よくスキップしている。
「真愛ね、お洋服とお靴が欲しい」
『わかった。真愛の行きたい所も行くけど、先にパパの行きたい所に行っていい?』
「いいよぉ!」
ミートソースで口の周りを赤くした真愛はご機嫌に微笑んだ。せっかくの色つきリップクリームが取れてしまった真愛の口周りをテーブルナプキンで拭いてやりながら、話を切り出すタイミングを考えていた。
ランチの後の行き先は東京郊外の霊園。ここに早河の両親が眠っている。
「パパの行きたい所って、おじいちゃんとおばあちゃんの所だったんだねっ!」
霊園に続く石段を真愛はぴょんぴょん跳ねて上がっていく。夏の盆でも春と秋の彼岸でもない、命日でもない、なんでもない日に急に両親の墓参りがしたくなった。
早河家の墓石に花を手向ける。早河は3歳の時に母親を、高校生で父親を亡くした。
妻のなぎさも娘の真愛も、早河の両親には会ったことがない。
「うさぎさん、天国に行けたかな。切られたお腹……治ったかな……。もう痛くないかな……?」
手を合わせていた真愛は冬の空を見上げた。
「天国には、おじいちゃんとおばあちゃんと、アキおじちゃんとリオちゃんがいるから、みんながうさぎさんを可愛がってくれるよね」
空の彼方の存在するかもわからない天国に想いを馳せる。
天国には早河の両親、なぎさの兄の香道秋彦、なぎさの親友の寺沢莉央がいると真愛は信じていた。
『きっとみんながうさぎさんを可愛がってくれるよ。天国にいるのは、優しい人達ばかりだから』
早河も信じていた。無惨に命を奪われた五匹のうさぎは、天国にいる彼らが真愛の分まで可愛がってくれるだろう。
彼らにとって真愛は孫で、姪で、親友の娘。
どうか、空の上から真愛を見守っていてください……早河は天に祈りを捧げた。
霊園を離れた早河と真愛が行き着いた場所は世田谷区の二子玉川ライズショッピングセンター。
両側を二子玉川ライズのビルに囲まれた広場には大きなクリスマスツリーが飾られていて、ショッピングモールの至るところでクリスマスモチーフの装飾を見かけた。
買い物を済ませて二子玉川ライズの店舗を出る頃には、空は夕暮れ色に染まっていた。真愛は新しい服と靴、ぬいぐるみを買ってもらって機嫌よくスキップしている。