早河シリーズ完結編【魔術師】
 JSホールディングス経営戦略部のオフィスでは、木村隼人がチームの面々と新製品プロモーションの会議をしていた。

隼人が指揮するチームは隼人を含めた六人で構成されている。リーダーの隼人の次に決定権を持つ副主任の吉川、入社6年目の半田、入社4年目の細井、同じく入社4年目でチームでは二名のみの女性社員の朝倉瞳、そして新入社員の坂下菜々子。

 今日は自社製品の飲料水のプロモーションについて協議している。健康志向を売りにしようとする半田側と、美容面を売りにしたい朝倉側で意見が二つに割れていた。

最終決定権を持つ隼人は半田側と朝倉側のどちらの意見も取り入れつつ、よりいいプロモーションができる案を模索する。

 会議がヒートアップする最中に隼人のスマートフォンの画面にチャットアプリ(※)の新着メッセージ表示が出た。
(※ここではLINE、カカオトーク等のアプリを指す)

隼人はアプリのメッセージを確認する。差出人は美月だ。
美月が仕事中に連絡をしてくることは滅多にない。あるとすれば、斗真か美夢の体調不良を知らせる連絡だけだ。

今朝の様子では子ども達は元気そうだったが、それ相応の緊急事態が起きたのかもしれない。

『少し席を外す。そのまま続けていてくれ』

 彼は部下に指示を出してフロアを出た。廊下でチャットアプリを開いてメッセージを確認する。


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 お仕事中にごめんなさい。
 さっき佐藤さんが会いに来たの。
 キングが動き始めてるから用心しろって言われて…
 上野さんに相談した方がいいのはわかってるんだけど
 もう頭のなかぐちゃぐちゃでどうしよう…

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