早河シリーズ完結編【魔術師】
『篠山警視が自分に指揮をとらせろと上に掛け合ったようだ』
『勘弁して欲しいですよ。恵子は早河のことだって毛嫌いしてたんだ。嫌ってる人間の子どもの誘拐事件に、あいつはわざわざ首突っ込んで……。しかも貴嶋が関与している可能性の高い重大事件の総指揮が恵子だなんて、不安しかない』
『警察庁の阿部警視監も早河も動いてる。真愛ちゃん達のことは俺達に任せて、お前は明日の小柳捕獲と佐藤逮捕に集中しろ。佐藤はお前の獲物じゃないか』
『ええ。佐藤は俺が逮捕します。美月ちゃんを傷付けることになったとしても』
肩を落として顔を伏せる上野をソファーに残して石川は立ち上がる。
『美月ちゃんのことは俺も出来る限りサポートする。あの子は娘の大事な親友だ』
石川は喫煙ルームを出て、廊下の片隅でスマートフォンを取り出した。着信履歴から娘の比奈の名前を捜して通話を繋げる。
3年前に高校教師の男と結婚した比奈とは、近頃は顔を合わせる機会も少ない。そろそろ孫の顔を見たいところだが、そういった話をすると鬱陶しがられてしまう。
嫁いだ娘ほど扱いにくいものはない。
{もしもしお父さん?}
『比奈、まだ美月ちゃんの家か?』
{ううん。隼人くんが帰ってきてくれたから、私は帰ったよ。斗真くんが心配だけど……}
『斗真くんの誘拐事件な、父さんも捜査に加わることになった』
{お父さんもって……じゃあやっぱり斗真くんを誘拐したのは貴嶋なの?}
比奈は貴嶋とは直接的な関わりはないが、美月や石川から貴嶋の話は聞いている。犯罪組織カオスの知識も一般の人々よりはあるだろう。
『まだわからないが、その可能性は高い。明日は仕事か?』
{明日は国内便が三本。朝から沖縄}
『そうか。明日もお客様に失礼のないおもてなしをして……』
{はいはい、わかってますよー}
比奈は子どもっぽく拗ねた声で石川に返事をした。
『勘弁して欲しいですよ。恵子は早河のことだって毛嫌いしてたんだ。嫌ってる人間の子どもの誘拐事件に、あいつはわざわざ首突っ込んで……。しかも貴嶋が関与している可能性の高い重大事件の総指揮が恵子だなんて、不安しかない』
『警察庁の阿部警視監も早河も動いてる。真愛ちゃん達のことは俺達に任せて、お前は明日の小柳捕獲と佐藤逮捕に集中しろ。佐藤はお前の獲物じゃないか』
『ええ。佐藤は俺が逮捕します。美月ちゃんを傷付けることになったとしても』
肩を落として顔を伏せる上野をソファーに残して石川は立ち上がる。
『美月ちゃんのことは俺も出来る限りサポートする。あの子は娘の大事な親友だ』
石川は喫煙ルームを出て、廊下の片隅でスマートフォンを取り出した。着信履歴から娘の比奈の名前を捜して通話を繋げる。
3年前に高校教師の男と結婚した比奈とは、近頃は顔を合わせる機会も少ない。そろそろ孫の顔を見たいところだが、そういった話をすると鬱陶しがられてしまう。
嫁いだ娘ほど扱いにくいものはない。
{もしもしお父さん?}
『比奈、まだ美月ちゃんの家か?』
{ううん。隼人くんが帰ってきてくれたから、私は帰ったよ。斗真くんが心配だけど……}
『斗真くんの誘拐事件な、父さんも捜査に加わることになった』
{お父さんもって……じゃあやっぱり斗真くんを誘拐したのは貴嶋なの?}
比奈は貴嶋とは直接的な関わりはないが、美月や石川から貴嶋の話は聞いている。犯罪組織カオスの知識も一般の人々よりはあるだろう。
『まだわからないが、その可能性は高い。明日は仕事か?』
{明日は国内便が三本。朝から沖縄}
『そうか。明日もお客様に失礼のないおもてなしをして……』
{はいはい、わかってますよー}
比奈は子どもっぽく拗ねた声で石川に返事をした。