早河シリーズ完結編【魔術師】
真紀の機嫌が良くなった頃合いに矢野は本題に入った。
『で、俺の方も子ども達の行方は掴めないままだ。真愛ちゃんのGPSも相変わらず反応なし』
「真愛ちゃんは小学校にいた時までの証言はとれてる。昼過ぎに友達と一緒に下校して、友達と別れた直後に連れ去られたのね。でも真愛ちゃんの通学路の辺りで不審者の目撃情報はなかった」
『街の死角を使って、上手いことさらったんだろうな。貴嶋が脱獄していつかはこうなるかもって覚悟はしてたけどさ、いざ直面するとやりきれない』
特別、旨くもなく不味くもないファミレスのコーヒーを矢野はブラックですすった。
この状況では食欲も出ないが、食べなければ身体がもたない。彼は再度、メニュー表を開いてサバの味噌煮セットをオーダーする。
「早河さんとなぎさちゃんはどうしてる?」
『家にいるよ。明日はなぎさちゃんは仕事休ませるって言ってた。仕事ができる精神状態じゃない』
「そうよね。子どもが誘拐されてる時に仕事なんてできない。捜査に私情を挟まないようにって気を付けていても、今回はどうしても感情的になっちゃう。なぎさちゃんと美月ちゃんの気持ち考えるとね……」
矢野の目の前にいる真紀は刑事でも自分の妻でもない、母親の顔をしていた。
子を持つ親としてなぎさの気持ち、美月の気持ち、早河の気持ちは矢野と真紀も痛いほどわかる。
「明日、私は小柳捕獲の人選には入ってないけど、上野警視と部下達が映画館を見張るから」
『OK。小柳はあれからツイッターへのログインもない。現れるとするなら俺に送りつけてきた例の場所だ』
明日14時、新宿シアター21のロビー。この場所が次の自殺志願者達の集合場所ならば、自殺志願の未成年者と連絡を取り合う小柳は必ずここに現れる。
「小柳を捕獲できれば奴から貴嶋に繋がる情報が引き出せる。そうすれば子ども達の手掛かりも見つかると思うの。本音は私も現場に行きたいけど……」
『真紀は佐藤を追うんだろ?』
矢野の指摘はいつも鋭い。隠していても矢野には真紀の心の内が見破られてしまう。
「それと美月ちゃんの警護もね。捜査担当の振り分けで決まったことに文句は言えない。だけど小柳追ってる方がマシに思える」
真紀がチョコレートパフェを頼む時は捜査で思い詰めている時だと矢野はわかっている。彼女は冴えない表情で残りのパフェをすくい取った。
「死んだと思っていた昔の恋人が生きていた。しかもその人は殺人犯。美月ちゃんの気持ちは私には想像もつかないよ。気は重いし、佐藤の生存を12年前に見抜けなかったことも悔しい。本当にこれでいいのかって……。でも私は佐藤を追わなくちゃいけない。……刑事として」
ぽつりぽつりと内側に溜めた想いを吐き出した真紀の心のように、チョコレートパフェが入っていた透明なグラスはいつの間にか空っぽになっていた。
『で、俺の方も子ども達の行方は掴めないままだ。真愛ちゃんのGPSも相変わらず反応なし』
「真愛ちゃんは小学校にいた時までの証言はとれてる。昼過ぎに友達と一緒に下校して、友達と別れた直後に連れ去られたのね。でも真愛ちゃんの通学路の辺りで不審者の目撃情報はなかった」
『街の死角を使って、上手いことさらったんだろうな。貴嶋が脱獄していつかはこうなるかもって覚悟はしてたけどさ、いざ直面するとやりきれない』
特別、旨くもなく不味くもないファミレスのコーヒーを矢野はブラックですすった。
この状況では食欲も出ないが、食べなければ身体がもたない。彼は再度、メニュー表を開いてサバの味噌煮セットをオーダーする。
「早河さんとなぎさちゃんはどうしてる?」
『家にいるよ。明日はなぎさちゃんは仕事休ませるって言ってた。仕事ができる精神状態じゃない』
「そうよね。子どもが誘拐されてる時に仕事なんてできない。捜査に私情を挟まないようにって気を付けていても、今回はどうしても感情的になっちゃう。なぎさちゃんと美月ちゃんの気持ち考えるとね……」
矢野の目の前にいる真紀は刑事でも自分の妻でもない、母親の顔をしていた。
子を持つ親としてなぎさの気持ち、美月の気持ち、早河の気持ちは矢野と真紀も痛いほどわかる。
「明日、私は小柳捕獲の人選には入ってないけど、上野警視と部下達が映画館を見張るから」
『OK。小柳はあれからツイッターへのログインもない。現れるとするなら俺に送りつけてきた例の場所だ』
明日14時、新宿シアター21のロビー。この場所が次の自殺志願者達の集合場所ならば、自殺志願の未成年者と連絡を取り合う小柳は必ずここに現れる。
「小柳を捕獲できれば奴から貴嶋に繋がる情報が引き出せる。そうすれば子ども達の手掛かりも見つかると思うの。本音は私も現場に行きたいけど……」
『真紀は佐藤を追うんだろ?』
矢野の指摘はいつも鋭い。隠していても矢野には真紀の心の内が見破られてしまう。
「それと美月ちゃんの警護もね。捜査担当の振り分けで決まったことに文句は言えない。だけど小柳追ってる方がマシに思える」
真紀がチョコレートパフェを頼む時は捜査で思い詰めている時だと矢野はわかっている。彼女は冴えない表情で残りのパフェをすくい取った。
「死んだと思っていた昔の恋人が生きていた。しかもその人は殺人犯。美月ちゃんの気持ちは私には想像もつかないよ。気は重いし、佐藤の生存を12年前に見抜けなかったことも悔しい。本当にこれでいいのかって……。でも私は佐藤を追わなくちゃいけない。……刑事として」
ぽつりぽつりと内側に溜めた想いを吐き出した真紀の心のように、チョコレートパフェが入っていた透明なグラスはいつの間にか空っぽになっていた。