早河シリーズ完結編【魔術師】
男は早河の煙草を受け取り、彼のライターで火をつけた。
『だけど早河さんよぉ、俺は貴嶋とは取引以降会ってない。奴の居所を知りたいなら残念だったな』
『まぁいい。べリアルとの電話での貴嶋の様子はどうだった?』
『様子と言われても別に……。ああ、でもこれは俺がそう感じたってだけだが……べリアルは女だ』
無精髭の生えた顎を撫でた男は細い一重瞼の目をさらに細めた。
『女?』
『べリアルと話してる貴嶋の口調がそんな感じした。貴嶋の人を小馬鹿にしたあの物言いも、女相手だと多少は柔らかくなるんだ。声が甘いって言うのかねぇ。貴嶋はあの技で女を落として操ってきたんだろ。奴が囲ってる女のひとりやふたり、こっちに流して欲しいものだ』
佐藤の情報ではべリアルの性別までは判明していない。男の言うようにべリアルが女だとすれば、貴嶋にひとつ近付いた。
『ソロモン72柱って知ってるか?』
『なんだそれ』
『早河さんゲーム興味なさそうだもんな。やっぱり知らねぇか。ソロモン72柱はソロモン王が封じた72人の悪魔だ。ゲームキャラの名前やモチーフなんかによく使われてる。べリアルもダンタリオンもSNSで話題のシトリーも、72人の悪魔のメンバーだ』
煙草の煙を吐き出した男はヤニのついた歯を見せてニヤリと笑った。
『べリアルは堕天使、それも反逆者を意味してる。貴嶋がどんな意図で手下の名前をつけてるかは知らんが、名前に見合う人間ってことだろ。気を付けた方がいいぜ。俺が言うのもアレだが命は大事にしろよ』
早河に貰った煙草を咥えて男は扉を閉めた。閉じた扉に背を向けて早河はアパートを立ち去る。
佐藤はもうひとつ、重要な情報を早河に与えていた。べリアルかダンタリオン、どちらかは警察関係者。
そしてべリアルは女の可能性がある。
(警察関係者で女って言ったら……浮かぶのはひとりしかいねぇんだよな……)
『だけど早河さんよぉ、俺は貴嶋とは取引以降会ってない。奴の居所を知りたいなら残念だったな』
『まぁいい。べリアルとの電話での貴嶋の様子はどうだった?』
『様子と言われても別に……。ああ、でもこれは俺がそう感じたってだけだが……べリアルは女だ』
無精髭の生えた顎を撫でた男は細い一重瞼の目をさらに細めた。
『女?』
『べリアルと話してる貴嶋の口調がそんな感じした。貴嶋の人を小馬鹿にしたあの物言いも、女相手だと多少は柔らかくなるんだ。声が甘いって言うのかねぇ。貴嶋はあの技で女を落として操ってきたんだろ。奴が囲ってる女のひとりやふたり、こっちに流して欲しいものだ』
佐藤の情報ではべリアルの性別までは判明していない。男の言うようにべリアルが女だとすれば、貴嶋にひとつ近付いた。
『ソロモン72柱って知ってるか?』
『なんだそれ』
『早河さんゲーム興味なさそうだもんな。やっぱり知らねぇか。ソロモン72柱はソロモン王が封じた72人の悪魔だ。ゲームキャラの名前やモチーフなんかによく使われてる。べリアルもダンタリオンもSNSで話題のシトリーも、72人の悪魔のメンバーだ』
煙草の煙を吐き出した男はヤニのついた歯を見せてニヤリと笑った。
『べリアルは堕天使、それも反逆者を意味してる。貴嶋がどんな意図で手下の名前をつけてるかは知らんが、名前に見合う人間ってことだろ。気を付けた方がいいぜ。俺が言うのもアレだが命は大事にしろよ』
早河に貰った煙草を咥えて男は扉を閉めた。閉じた扉に背を向けて早河はアパートを立ち去る。
佐藤はもうひとつ、重要な情報を早河に与えていた。べリアルかダンタリオン、どちらかは警察関係者。
そしてべリアルは女の可能性がある。
(警察関係者で女って言ったら……浮かぶのはひとりしかいねぇんだよな……)